ブルータスよ、おまえもか  にしかたゆうじ 2006/04/22
 マガジンハウスから発売されているブルータス2006年4月15日号にこんな記事を見つけた。(そろそろ店頭からなくなっているかと思うので、このタイミングで紹介してみよう)

 本来ならば、マガジンハウス社に直接クレームを差し上げるべきと思われるが、雑誌のあちこちを捲ってみても、そんな窓口は設定されていないようなので、この場を借りて紹介してみようと思う。

 問題の記事は、P-108にある。フランスを代表するレストラン「タイユバン」のメートル・ド・テルのクリスチャン・シュヴァリエ氏に三ツ星レストランの使いこなしを聞く記事のことだ。問10のワインリストについての答えを原文のまま引用してみよう。

 「ワインはまず、ソムリエがテイスティングをする。ありえない話だが、もしもブショネ(コルク臭がある)の場合は突き返せる。自分のイメージと違う場合も同じく返せる。

 え。と思わざるを得ない。ブショネの件はいいとして、赤字の部分に大注目だ。

 もしこの記事に間違いがないとするならば、私はすぐさまタイユバンに陣取り、おもむろにこの頁を開きつつ、レストランが所有するロマネ・コンティとモンラッシェを片っ端から注文することだろう。普通ホストテイスティングでは、余りゴクリと飲むことはないが、こんな時はちょっと大目に注いでもらって、ゴクリゴクリと飲み干せば、自分のイメージと違うから、という理由でソムリエにワインを返すことにしよう。たった一口しか飲めなくとも、何十万(百何十万?)もするワインを数種類も味わうことができるとするなら、飛行機代だって惜しいはずもないのでないか。何人かで行けば、ホストテイスティングを順番に繰り返しつつ、いろいろ楽しめそうだ。もとい、自分のイメージと違うから、せっかくのディナーも台無しだ(笑)。

 こんな馬鹿げたことは、馬鹿げたことと思っていたが、天下のタイユバンをして、お客様の好みにこれほど寛大であるならば、さすがタイユバンと絶賛せざるを得ないが、この記事を読んでほかのレストランで、こんなことをされた日にゃ、一体誰が責任取るんだと、質問したくなるから悲しくなる。

 普通、ホストテイスティングをした結果、ブショネ等のワインの欠陥がある場合は、無償にて交換してもらえるが、(最近は、交換に応じないレストランもあるというが(注)・・・)、好みと違うという理由では無償交換は難しいというのが一般的だろう。ホストテイスティングは、ワインの欠陥チェックのほかは、シャンパンが温かったら、冷やしてもらうよう指示したり、ワインが冷たすぎたら何らかの方法で温度を上げてもらうよう依頼するためにある。

 この記事が単なるライターの勘違いと校正ミスであることを望みつつ、この記事を読み返すごとに、同じ頁の問15のお皿のソースをパンで拭き取ることを厳禁としている点に大いなる不満を持ち、しかし、問11のワイングラスをまわすことはエレガントでないのでやめたほうが良いと、しごく真っ当なことも言っていたりするので、読み返すほどに、疲れるのであった・・・。(ほかの特集は、面白かったんですが・・・)

 ブルータスよ、ほんとはどっちなんでしょうか。


 注 あるレストランでは、ブショネ対応として、デカンタしたから大丈夫ですと真顔で返答されるところもあるという・・・(辛)。


つづく


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