「羊をめぐる冒険」を巡る冒険 (2004/02/14)

 
 愛車兼名車のフェラーリ(号)が車検のため、某最優良整備工場にピットインしていたある日。

 日頃の運動不足のひとつでも解消しようかと、ひさしぶりに湘南平までウォーキングしている途中、弊サイト「博多を巡る冒険」で貴重なニュースソースとなっている某夫妻宅のあたりを歩いていると、向こうから見覚えのある人がジョギングでこっちに向かってくるのが分かった。小柄で、ジョギング慣れしたその走りに、自分もウォーキングをやめて走るか、などと思ってもいないことを思うふりをして、あの人は誰だったかなあ、と思案していると、まもなくその人は私の横を通り過ぎていった。私が軽く会釈をしたのを受けてか、軽く頭を下げたその人は、そのペースを崩さず、足早に?去っていった。

 「あ」

 「村上春樹さんだ」

 名作「1973年のピンボール」や超ベストセラー「ノルウェイの森」やタイトルをもじらせてもらっている「羊をめぐる冒険」でおなじみの作家・村上春樹氏その人だと思った。かつて同じ町内に住んでいたのは知っていたが、不確かな情報によりヨーロッパのどこかの街に移住してしまったと思っていたが、戻ってこられたのかぁ、意外に若いなあ、結構小さいなあ、走るの早いなあ、と思ったりした。ジョギングの途中で挨拶も何もしなかったので、本人かどうかは確定できないが、少なくとも、その後道端で出会った狸が、小太りの猫だった確率よりは確かだろう。推定本人率82.35%くらいかも・・・。

 奇しくも日本を代表する人気作家と弊サイト「ブルゴーニュ魂」が同じ町から発信されていようとは、単なる偶然とは思えない運命めいたものを感じるのは、おそらく私だけではあるまいと思っているのは、どう考えても私だけだろう。

 かつて村上氏が通ったバーが我が家の近くにある。今夜あたりちょっと覗いてみようか。そこでバーボンのロックでも舐めながら、久しぶりに「1973年のピンボール」を手に取り、養鶏場跡地に眠るピンボールマシーンの件でも読んでみようかと思いつつ、推定村上春樹氏と別れた後、ちゃんとてっぺんまで登った湘南平では、女子大生と思しき女性二人が楽しそうにバトミントンをやっていて、幸せの一部を切り取ったような光景に、穏やかな春の到来を感じさせる、そんな一日だった。


おしまい

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