昼下がりのル・ゴロワ (2004/02/18)

 
 表参道のメインストリートから一本入った閑静な場所に、ビストロ系フレンチの「Le Gaulois ル・ゴロワ」がある。本日現在、このフレンチレストランはマイ・フェバリット・レストランの第一位に輝く名店であり、その「壺に嵌った」味わいはハッピー以外の何者でもなかったりする。

 ゴロワさんには賛否両論あると聞く。カウンター席がメインのため、調理場とテーブルが数十センチしか離れていないためであり、ラーメン屋さんのカウンター席と大差ないといわれれば、否定のしようもなく、されど私などはそう思うなら行かなきゃいいのにと思ってしまうこの頃だ。カウンター席という独特の空間を楽しみに行く。そう広くない厨房に男性四人が見事な役割分担を演じて、大塚シェフの真心こもった料理の数々が完成する。決してぶつからない作業のよさに感心しつつ、大塚シェフの料理現場を目の当たりに出来るというシチュエーションは、かなりお得な空間と思ってしまうのはどうやら私だけではないようで、その日も厨房への視線が熱い料理人やサービスマンと思しき一人客が数名、料理と料理人に注目している様を横から眺めていたりした。

 ここはビストロ系フレンチなので、普段着のままで食べてもいいし、フォーマルに着こなしてもいい感じで、要は自分の気持ちに素直な服装で来られるレストランかもしれない。ここはまさしく、おいしい大塚ワールドを楽しみに行くところで、その日も昼間ニ回転するという盛況ぶりに、納得の食空間だったりした。

 今回は(前回から少し間が空いてしまったが・・・)、前菜二品のメイン一品のコースを二人で注文して、お皿をシェアさせてもらったので、都合6皿を楽しむことが出来た。そしてそのすべてのお皿に感動に近いハッピーを感じさせてもらったが、この日の圧巻は、なんといっても子羊の肩肉のポトフだった。所謂練り物のないおでん風といえば想像もつきやすそうで、これは秋田駅前の「ふうかきや」さんの山菜おでんに共通する味わいだ。お皿の中央に鎮座する丸い大根にラギオール製のナイフを入れた瞬間の今まで経験したことのない切れ味に、幸せのビームが背筋に走る。野菜のうまみを十二分どころか三十五分ぐらい引き出し、香辛料に頼らない自然のうまみで勝負されると、もうメロメロ状態に突入なのである。ゴボウもなんでこんなに旨いんだ。人参もなんでこんなに凄いんだ・・・。「北海道から野菜を取り寄せてます」とサービスの女性に伺って、食材へのこだわりに感心することしきりである。(なぜか事前に入荷情報をキャッチした厚岸の牡蠣も極うまで、かつ何で一皿に六個もあるのか不思議だ・・・うれしいじゃないか・・・)

 ゴロワさんは野菜が旨い。これは前回の訪問で実感したところであるが、今回も野菜の美しさに感極まる思いである。野菜の生命力をそのまま料理にしたような趣は、食べて楽しく、見てハッピー、ちょっとしたサプライズに心も躍る。この何とも癒される味わいは、大塚ワールドの真骨頂だろう。香辛料が前面に出ず、あくまでも素材のうまみを引き出していて、そのうまみは和のお出汁に通じている。大塚ワールドは食べていて疲れないし、翌朝の目覚めのよさも心地よい。ブルゴーニュワイン(シモン・ビーズのサビニー・レ・ボーヌ2000)との相性もすばらしく、何とも幸せだからしようがない。あはは。笑っちゃうほどのうまみがここにあるのだ。

 我が食生活にゴロワさんが馴染む時、それはとても幸せなひと時で、自分のライフサイクルやモチベーションに料理のパワーを組み込めるとしたら、それはきっと生きる喜びに通じているに違いないと、妙に哲学チックになりつつ、サビニー・レ・ボーヌにちょっと酔ってしまったりした・・・。

 今度はいつお邪魔しよう。遠すぎず近すぎない東京の距離感に、ちょっとばかり戸惑いつつ、さていつ行こうか !?。 


おしまい

目次へ    HOME

Copyright (C) 2004 Yuji Nishikata All Rights Reserved.