なんだかなあ その2 (2004/04/23)

 
 先日都内某所のワインバーのようなところで、カリフォルニアのワインを楽しみつつも、どうも店内の様子に違和感を覚えたりした。そこは、スタンディング形式のカジュアルなバーなのだが、そう広くない店も夕方の書入れ時でかなり混雑していた。で、真ん中のテーブルには数名の男女が楽しそうに夜の宴を催していて、みんながそれぞれにワインを飲んでいるのだが、ふたつの点で私を絶望させた。それは、みな煙草を吸っていて、せっかくの香りが台無しになってしまったのだ。もちろん私のワインも煙草の煙に紛れて、とほほの状態。友人の店員も喫煙客への対応は難しく、何とか改善策を練っているとのことだった。友人がいなければ、危うく注意をしようと思いつつも、初めての店でもあるし、友人も困っているし、そこにいる全員が煙草に罪悪感を感じていないようなので、まあしばらくは黙って彼らの動向を見たり見なかったりした。

 そして、もうひとつの絶望点は、彼らがちっともワインを見ていないことだった。ぐるぐるグラスを回しながら、ワインのことなど顧みず、楽しそうに会話をする彼らに、ワイン文化ってなんじゃろと思う。彼らにとってはお酒であれば、ワインじゃなくてもいいんじゃん、なのだろうか。ただ酔うためだけのお酒としてのワイン・・・。造り手の苦労を思うと、何とも居たたまれない気持ちにもなるが、こういう楽しみ方もあるのかなあと思いつつ、彼らとは決して交わることのないワインライフを意識したりするのだった。

 ところで私はワインをこよなく愛し、煙草も楽しむ人を多く知っているが、彼らの煙草との接し方はとてもスマートだ。某女史や某氏のように、分煙を心がけている人も多く、また豊橋の某氏のように、場所やワインの流れに応じて煙草のタイミングを計る人たちもたくさんいる。ワインバーでも禁煙にしたり、喫煙コーナーを別個に設けているところは多い。彼らの煙草とワインのスマートな付き合い方を拝見するにつれ、どうもその夜の某所の連中たちのタチの悪さには、言葉もなかったりする。もしも、海棠きらら(注)がその場に居合わせたなら、きっとこう呟いたに違いない。「ワインが泣いています・・・。」

 ワインは共有してこそなんぼ、という説もある(自分調べ)。おいしいワインを楽しむために、ワインを楽しむ環境作りと啓蒙活動の必要性を思いつつ、その夜はそうそうにギネスビールに切り替えたりするのだった・・・。なぜだか無性にソービニョン・ブランが飲みたい夜だったのに・・・。


おしまい

(注) 海棠きらら 漫画「きららの仕事」原作・早川光 漫画橋本弧蔵 集英社刊の第一巻第一話参照。


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