焼肉が食べたくなる本 (2007/04/27)

 
 「焼肉のことばかり考えている人が考えること」 松岡大悟 扶桑社

 この本は、タイトルのとおり「焼肉」のことばかり考えている人が、「焼肉」についてのみ語った本で、焼肉のバイブルにもなりそうな、とても面白い本だった。この人、本当に焼肉が好きなんだなあと、しみじみ思いつつ、文中で紹介される「異端の奥義ローリング・ホールド」や「七輪技・網づらし」「3:7焼き(7:3では駄目らしい・・)」などの焼き技の妙技が紹介され、ふむふむふむと、なにやらほくそ笑みながら読み進めてしまう。この本をマスターすれば、誰でも簡単に鍋奉行ならぬ「焼肉」奉行になれそうで、今宵、早速焼肉店の暖簾をくぐりたくなってくるから不思議だ。

 本書では、焼肉のいまさら聞けないあれこれが、「焼き肉大好き」な目線で紹介されている。その好き目線は、確実に読み手に何かを強烈に訴えてくれる。カルビってどこの部分?。牛の正肉の部位一覧表には、ヒレやら、肩ロースはあってもカルビはない。カルビってそういえば、どこの部分のことなんだっけ。いまさら聞けない焼肉話が、親切かつ楽しく書かれて、読むごとにうれしくなってくる。また4つの胃袋を持つ牛の、それぞれの意の特徴って何だっけ?。そんな疑問をいとも簡単に、さらりと図解入りで紹介されては、面白がって読むなというほうが無理目な話だったする。ミノからハチノス、ヤン、センマイ、ギャラへと続く胃袋シリーズを読み進めれば、それぞれの部位をやたらと食べたくなってくるのだ。

 著者は、あとがきでこんな名言を残している。 「人生は、焼肉じゃない。でも焼肉は、人生の一部だったりする」

 なるほど面白い。焼肉に対する愛と、集中力は、この本の一貫したテーマだ。「放置プレイ」を嫌う態度は、私の最も共感するところ。この人となら、焼きに肉はもっとおいしく食べられそうで、読後清涼感とともに、著者に会いたくなってくるから面白い。焼肉はもっとおいしく食べられる。久しぶりに名著に出会えた喜びとともに、誰かと焼肉食べに行きたいこのごろだ・・・。下北沢にでも、足を伸ばそうかな(笑)


おしまい

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