ドメーヌを巡る冒険


 テーマ : 特級クロ・デ・ランブレイを巡る冒険

 ブルゴーニュワインをより豊かに楽しみたい。それにはブルゴーニュをより深く、より広く、そしてより楽しく知りたくなる。ということで、ドメーヌに関する諸問題やらエピソードをクイズ形式でお送りするこの企画。第10回目の今回は、モレサンドニ村の特級 クロ・デ・ランブレイに迫ってみよう。


 クロ・デ・ランブレイからの問題

 1981年に1級から特級に昇格したモレ・サン・ドニ村のクロ・デ・ランブレイには二人の所有者がいる。ドメーヌ・デ・ランブレイとドメーヌ・トープノ・メルムである。その所有比率は、ドメーヌ・デ・ランブレイが大部分を所有し、ドメーヌ・トープノ・メルムはわずかに一樽分のクロ・デ・ランブレイを生産するに留まっている。さてここで問題。この二人の所有者の規模として、本当に大きいのはどっちだろう。

 
 答え どっこいどっこい

 まずは、特級クロ・デ・ランブレイの作付面積を見てみよう。畑はモレ・サン・ドニにあり、グランクリュ街道に面するドメーヌ・トープノ・メルムの背後の斜面がそれで、8ha69a75caほどある。これは同じく特級のクロ・ド・ラ・ロッシュの約半分の大きさである。クロ・ド・ラ・ロッシュには多くの造り手がいるが、このクロ・デ・ランブレイには二人の所有者しかいないところが興味深かったりする。このうち、ドメーヌ・トープノ・メルムが所有するのは、わずかに4a30caでボトル数で約300本しかなく、残りをすべてドメーヌ・デ・ランブレイが所有し、概ね平均で35,000本生産されているという。圧倒的な差であり、ドメーヌ・デ・ランブレイが再三残りの畑の買収話をするのも頷けたりする。買収が成功すれば、ロマネ・コンティと同じくモノポール(単独所有)となるわけで、商品価値は俄然上昇するはずだからだ。ドメーヌ・デ・ランブレイにとっては、この0.5%が目の上のたんこぶ的であり、おさまりが悪い状況が続いていると推察できる。

 一方、ドメーヌ・トープノ・メルムはこの特級畑のほかに、シャルム・シャンベルタンとマゾワイエール・シャンベルタンを所有し、その他いくつかの畑をもち、総面積は9.5haに達している。そうなのである。クロ・デ・ランブレイ自体は極わずかしか所有しないが、その畑以上の面積をこのドメーヌは所有しているのだ。9.5haはブルゴーニュでは決して小さい数字ではない。

 ドメーヌ・デ・ランブレイの方も、ドメーヌ名こそ畑名と同じだが、この特級畑以外にもモレ・サン・ドニに1級と村名、ピュリニー・モンラッシェに2つの1級畑を持っているのだ。その所有する面積の詳細は不明だが、手元の資料に寄れば、それらの畑の合計は1.3haほど。これを特級クロ・デ・ランブレイ分をプラスすると、9.3ha程度になる。あれれ。どっこいどっこいではないか。特級の所有比率から見れば、トープノ・メルムは圧倒的に小さく見えるが、実は両者は同規模のドメーヌであり、ここら辺を意識するとワインも楽しくなったりするから不思議だ。畑の買収を拒否できるのもある意味頷けたりする。特級クロ・デ・ランブレイは、生産量が多く(もちろんドメーヌ・デ・ランブレイの方だが)、需要と供給のバランスにより比較的安価に入手できる特級ワインだ。何万本もあるからだが、1000本に満たないワインが多いブルゴーニュにあって、この特級ワインは面白い存在だろう。

 そしてもうひとつ。この特級畑は、AOC(原産地呼称統制法)施行後、初めて1級から昇格したワインとしても有名で、その年号は1981年である。(二番目に昇格したのは、ロマネ・コンティとラ・ターシュの間に位置するラ・グランド・リュで、その昇格は1992年7月2日であり、1991年ビンテージより適用されている)

 また余談ながらドメーヌ・デ・ランブレイの特級クロ・デ・ランブレイのピノノワール情報は公開されていて、平均樹齢40年のクローン番号114、115、272の三種類が植えられている。平均収穫量は31hl/ha。
 
 もうひとつ余談ながら、ドメーヌ・トープノ・メルムが1999年ビンテージからリリースするニュイ・サン・ジョルジュ1級プルリエはいかにも男性的で、女性的な味わいが特徴のこのドメーヌの異端児的な味わいがあり、結構好きだったりする。
 
 
以上

2003/03/21



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