最近のセミナーあれこれ

 最近のワインセミナーでのあれこれをいくつか。


 2005/02/16にespace oisoさんで行われたワインセミナーのメインテーマは、「アルマン・ルソーの2002年を利く。」で、藤原シェフの素材のうまみを生かした極上料理と共に、ルソーのジュブレ・シャンベルタン、一級カズティエ、特級シャルム・シャンベルタン、特級シャンベルタン・クロドベーズを飲み比べてみた。前半は赤系果実の豊かな味わいで、ルソーの美味しさをしみじみと感じることができたが、驚くべきは特級ワインニ本の印象の違いだった。メインディッシュの子鴨料理とともにサービスさせていただいたのだが、シャルム・シャンベルタンが料理の良きパートナー的な存在だったのに対し、クロドベースは、料理をお供に従えたかのような絶対的なパワーを持っていた。同じ作り手が同じ年に同じ品種が植わる違う畑から造り上げた逸品は、それぞれに個性を発揮していて、まさに「ブルゴーニュのテロワールここにアリ」を実感することとなった。そして参加者某氏の感想が、またすばらしかったので、ここで紹介させていただくと、それは「最後のワイン(筆者注 = クロドベーズ)を味わった時に、初めてワインを飲んで大地の風景が浮かびました」というものだった。某氏はブルゴーニュの畑を見たことはないらしいが、ワインを通じてその大地の風景を思い起こしてもらえるとは、紹介者として感慨もひとしおである。

 ブルゴーニュワインは高価で、とくにルソーのクロドベーズは超高級ワインのカテゴリーの中心にあるようなワインであり、日常的には味わえないが、時々はこんなワインもあるんだと自身の舌と体で体感してもらえれば、ワインの魅力に接してもらえるかと思われる。



 つづいて2005/02/19に渋谷のモンフィナージュさんで開催した「レコルタン・マニュピュランのシャンパーニュを葡萄品種別に味わう」の会も充実していた。某氏の表紙を飾ったジェローム・プレボーを皮切りに、ジャック・セロス、ダビッド・レクラパール、エグリ・ウリエのシャンパーニュをそれぞれに適した温度と順番でサービス。プレボーのピノムニエ100%のラ・クローズリは、ビオディナミ系のワインによく見られる還元臭を伴いつつも、天日干されている麦わらのベッドに寝そべったような温かみがあり、華やかでエレガントなシャンパーニュだった。ピノムニエの特徴をとらえるのにも最適で、華やかさの反面、幾分腰の弱さが気にかかるのも、なるほどと思わせてくれたりする。ジャック・セロスは、シャルドネ100%のブリットを。華やかさとともに充実した酒質はシャルドネが世界中に伝播した理由を垣間見ることもできた。同じシャルドネのレクラパールのシャルドネは、本来はピノノワールが最適の土壌ということと、独特の酵母の残し方が印象的なシャンパーニュで、同じシャルドネながらそれぞれの個性が引き立っていた。そして熟成型シャンパーニュの筆頭格のエグリ・ウリエのピノ・ノワールだけから造られたシャンパーニュは、ピノ・ノワールから造られたちょっぴりピンクがかった白ワインとして楽しむことで、ピノ・ノワールの高貴な味わいも楽しめた。そしてそのいずれもが、四者四様のすばらしい味わいだった。

 同じACシャンパーニュながら、葡萄の個性や造り手の哲学によって、多種多様な味わいが表現されていて、レコルタン・マニピュランのシャンパーニュの魅力にどっぷりとつかることができたように思う。彼らのシャンパーニュに慣れてくると、大手のシャンパンメーカーのそれが遠ざかっていくような・・・。



 そして、昨日(2005/02/20)に、にっぽん料理nononaさんで行われた日本のワイン特集もまた日本の食文化の奥深さを知る絶好の機会となった。ジャニーズ系のイケメンで東大卒の長男がワイン造りに参加しているイケダワイナリーのワインをメインににっぽん料理とのコラボレーション。なかでも、「2003年・甲州遅摘み」は、nononaさんの出し巻き卵との甘みつながりが面白く、その美しい味わいに、日本のワインの高品質を実感し、またカベルネ・ソービニョンとメルローがブレンドされた「2003年セレクト」は、特性フキ味噌と同じ味がして、これはかなりのサプライズだった。またこのフキ味噌は、同じ品種構成の2001年キザン・セレクション(終売)とは微妙にあわず、キザンは単独で飲むか、猪のすきやきと一緒に飲むことで、その酒質の高さを味わうことができたりした。イケダワイナリーの赤にしろ、キザンの赤にしろ、もしもブラインドでサービスしようものなら、ボルドーの銘醸級と間違えそうな味わいに、ちょっとビックリするかも、である。


 この一週間で、いろいろなワインと出会うことができ、ますますワインの魅力にはまりつつ、そんなセミナー会場での出会いもまた、人生に豊かさをもたらしてくれるものと信じて、今週もセミナーを開催していきたいと思ったりする。


 2005/02/21記


以上



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