ブルゴーニュを歩こう 6

<ヴージョ>
 ヴージョは特異な村である。アペラシオンに占める特級ワインの比率が以上に高いからだ。作付け面積50haの特級クロドヴージョが全体の75%を占め、一級が17%、村名が7%しかないのである(全部たしても100%にならないのはご愛嬌ということで)。
 クロドヴージョはロマネ・コンティ、シャンベルタンと並びブルゴーニュを代表する特級畑にして、唯一国道74号線に接している。シャンボール・ミュジニー村で道に迷っても国道さえ目指せばなんとか辿り着けるし、ディジョンからバスに乗ってもバス停が畑のすぐ横にあるので非常に便利である。シャンボールのアップダウンの坂道に比べ、平坦な町並みは歩いてこの村に来た者にはやさしい造りをしている。また、国道面には大掛かりな門もあるし、そして憧れの特級ミュジニーの手前にデンと構えるシャトーはとても印象的である。栄光の三日間でおなじみのシャトーは見学も出来るようだが、ディジョンから歩きつづけたものには、余り縁がないから不思議である。疲れた身体にシャトー見学は酷というものだ。時間があるときと、体力がある時はぜひ訪問してみたい。
 ヴージョ村は石畳で整備され、レストランやワイン屋さんも数多くある。さすがシトー派の伝統の良さを思い知るところである。

<特級クロドヴージョ>
 この有名な特級畑は所有者が70人以上いることで知られ、よくボルドーワインたとえばシャトー・ラフィット・ロートシルトなどと比較される。ラフィットは単独所有であり、クロドヴージョは70人以上に分割されている。これだけの人間が同じ畑から同じワインを造るとなると当然品質にばらつきが出てくる。特級と言えどもピンからきりまで。当たりと外れ。生産者によって歓喜に差があるのは当然といえば当然である。
 ただしこの畑はシトー派が耕作してから700余年、単独所有畑として実質3者の手にしか渡っていなかったことを忘れてはいけない(ような気がする)。この畑の悲運はフランス革命で口火を切って、分割相続や売買を重ねるうちにこのような状態になったのだ。ロマネコンティが単独所有を守るため法人化されたのとは対照的な運命をたどっている。
 では誰のクロドヴージョがうまいのか。幸運なことに私はこの特級を飲むことに恵まれている。ルーミエ(1996がラストビンテージ) JJコンフュロン メオ・カミュゼ ドニ・モルテ アンヌ・グロ(未掲載) ルネ・アンジェル ジャン・ラフェなど枚挙に暇がないし、ルロワのそれも出会ってみたい。
 クロドヴージョはその性格上、他の特級よりも安価である。安価といってもそれは相対的な価格であって庶民的にはそうやすやすと手が出る代物ではないが・・・。

 この特級の特徴は「一言では言い表せないところが特徴」と言えなくもない。広すぎる作付け面積のためでもあるし、造り手によって味わいが異なるためでもある。抜栓するまでどんな味わいなのか見当が突きにくく、ここぞというときに出しにくいワインでもある。瞬時にそのワインの特徴と飲み方を察知しなければならないからだ。自分の意図したストーリー通りにもっていくなら、クロドヴージョは避けた方が良いかもしれない。または二本買ってきて一本をすぐ飲んでその味を確かめ、とっておきの夜に備える。クロドヴージョを思い通りに使いこなせるのは、お金持ちか、貧乏だけどブルゴーニュにとことん惚れこんでいるか、たぐい稀な味覚センスの持ち主だけだろう。

 そしてこのアペラシオンの一級には白ワインがある。まだ飲んだことがないので、出会ったときに追加記事を書こうと思う。

 そしてこの村の隣には赤ワイン最高峰のロマネコンティが待ち構えている。


つづく


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