ルロワ PART2
試飲日 2000年8月26日
場 所    神奈川県内JR沿線某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOC赤ワイン
生産者 Leroy ( Auxey-Duresses )
Vintage いろいろ
テーマ ルロワを5本も楽しむ。
ワイン
Cote de Beaune Villages 1995 Maison Leroy
Fixin 1983 Maison Leroy
Beaune Cent-Vignes 1982 Maison Leroy
Nuits-St-Georges Aux Boudots 1997 Domaine Leroy
Vosne-Romanee Les Beaux Monts   1996   Domaine Leroy


 今回はルロワの名醸赤ワインを一気に五本も試飲する機会に恵まれた。上3本はネゴシアンもの、下2本はドメーヌものである。ルロワ尽くしは過去にも経験したことはあったが、ドメーヌものを交えての豪華テイスティングは初めての経験だった。
 やはりルロワはすばらしい。その一言が全てを言い表してはいるが、あえてこのワインレポートに記録してみよう。


<<コート・ド・ボーヌ・ヴィラージュ>>
 このワインは95年ものであるが、その色合いには熟成の始まりを知らせるガーネット系の趣がグラスのエッジにあった。澄んだ香はいつものように上品で、これでもかと言わしめるパワフルなアロマはないが、静かながらも確実に至福の世界へと導いてくれる。
 塩分を感じる味わいは、カマンベールなどの塩味を感じるチーズに合いそうだ。酸もしっかりしているので、食事と一緒に飲むには最高のワインだろう。

 このAOCはルロワ帝国の本拠地でもある。コートドールで屈指の大名醸ワインを生産しつづける自信がこのワインにも伝わってくる。お膝元のワインには、特別な思い入れもあるであろうことは容易に想像がつくし、その気合はワインを通じて垣間見ることが出来る。


<<フィサン>>
 熟成の頂点にある味わいである。動物香がかすかに感じられ、干し葡萄の風味をあわせもつ。干し葡萄を使った蒸しパンと一緒に飲めば、両者の特徴がより引き出されて、それはおいしくいただけるだろう。

 カミュの85年シャンベルタンとも共通する趣を感じざるを得ない。このガーネットの色合いには、決して外すことがないルロワの余裕すら感じる。このACフィサンはジュブレ・シャンベルタンの一級畑に隣接し、その土壌は共通しているとの情報がある。まさにはジュブレの隣の畑を思い浮かべることが出来る。
 熟成の頂点にあるワインを8,500円で堪能できるとは、とても得をした気分だ。


<<ボーヌ・サン・ヴィーニュ>>
 このワインは前回のレポートで報告済みである。三度試飲できた幸運に感謝の意を表したい。品のいい土壌香と、ほどよいすっぱみ。うまみ成分も十分あり、まさにルロワ節の典型である。グラスに残った澱が、静かに18年もの歳月を感じさせてくれていた。


<<ニュイサンジョルジュ・オー・ブドー>>
 色は紫かがったブルゴーニュ系の赤。上記3ワインに比べ格段に色が濃い。やはりドメーヌものの格の違いを色合いからして思い知らしめてくる。アロマは品のいい花の香。
 従来のニュイサンジョルジュのイメージを払拭させる強烈な印象だ。

 このAOCにありがちな湿った土壌香はない。いやかすかにあるか。しかしその嫌味な土臭さはない。時間とともに花の香に甘味がプラスされる。ミルク香も加わり、とても優雅である。味わいは、こく・うまみともに十分あり飲むごとに悦びが増す。味に奥行きがあり、液体としてではなく、やわらかい固体のような楽しさがある。

 マダムルロワはこのワインの飲み頃は2005年からという。この味わいが5年後にどうなっているのかを想像するのも楽しいが、その頃に一体いくらになっているのか、ちょっとぞっとする。

 そうこうしているうちにグラスの中は大変なことになっていた。INAOグラスが百合の花で一杯になっているではないか。目をつぶれば手に持ちきれないほどの花束。
 ううう。この香だ。ワイン史上最高ランクに位置付けられる香だ。この香をダイレクトに表現したい。私のボキャブラリーの貧困さと、そもそも日本語には香を表す言葉が少ないことに苛立ちすら覚える。


<<ヴォーヌ・ロマネ・レ・ボー・モン>>
 エキセントリックである。静かでもある。だが、この力強さはすごい。
 色は濃く黒系と赤系が調和している。味わいは奥深くふくよかである。それにもかかわらず飲みやすいのが、不思議である。しかし飲みほした後に戻ってくるうまみ成分(いわゆるバックという飲み応えだ)と、後からじわじわ滲み出るタンニンの強さは他に例を見ない。歯茎に染み入る渋みも雑味がなく、ワンランク上の大人の味を醸し出している。

 うまい。時間とともに薬味感のある香に焦がした甘味が加わってくる。
 グラス一杯では正直物足りない。もっと飲みたい。しかし35,000円以上もするので、一杯でも精一杯だ。ジレンマに陥る。飲みたいけど、買えない。買えないけど、飲みたい。
 恐るべしルロワ。そしてありがとうルロワ。


<<まとめ>>
 ルロワはすばらしい。ルロワはテロワールに忠実であるという。しかしルロワのワインは他の造り手の個性を超越している。他のつくり手のワインを飲んで確認したテロワールの特徴もルロワの一本で吹き飛んでしまう。
 ルロワには全てのワインに共通する精神があると思う。それは決して外さない安心感ともとれるし、卓越した味わいとも取れる。
 マダムルロワはドーブネ・ドメーヌルロワ・ネゴシアンルロワとそれぞれの立場に応じてワインを造りだしている。その立場によっても味わいは異なる。私はそれをドーブネ節、ルロワ節、ルロワネゴシアン節とよんで、敬意を表したい。

以上


目次へ    HOME

Copyright (C) 2000 Yuji Nishikata All Rights Reserved.