アルマン・ルソー 1978
試飲日 2001年7月29日
場 所    埼玉県内某所     
照 明 自然光
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOCワイン
生産者 Domaine Armand Rousseau
Vintage 1978
テーマ ルソーの古酒
ワイン Ruchottes Chambertin Clos des Ruchottes

<リュショット・シャンべルタン クロ・デ・リュショット>
 ジュブレ・シャンベルタン村 特級赤ワイン 単独所有(モノポール)

 
今回のワインの前評判は芳しくなかった。半年以上前に試飲されたときに漏れ伝わってきた情報は、盛りを過ぎてしまった残念なワインということだった。小売価格もそのテイスティングを境に大暴落したワインである。その曰く付のテイスティングと同じキュベを試飲する幸運に恵まれた。感謝である。

 色合いは熟成した極上のレンガ色をしていて、かなり薄い印象を受ける。まさに20余年の歳月を経て水に帰ろうとしている雰囲気である。INAOグラスに注ぐとキツメのブーケが漂っている。んん。確かにこれは熟成を通り越し、逝ってしまっているかもしれないぞ。口に含めば刺すような辛口。これは刺々しいワインかもしれない。前評判の信憑性も真実味を増してくる。しかし、キツイ味わいの中にもうまみが見え隠れしているような気がしないでもない。ここはグラスを大きなブルゴーニュグラスに持ち替えて、仕切り直しと行こう。

 やはり、である。大きなグラスでいただけば、ワイングラスの形に沿うように丸くなっている。うまみ成分が最後の力を振り絞り、心の中に染み込んでくる。確かにこのワインは熟成の頂点を、かなり昔に通りすぎてきたようではある。しかし極上のピノ・ノワールは急激に味わいを衰えさすのではなく、じわりじわりと静かに水になり、土に返ろうとしていく。それが証拠にアルコール度数は数パーセントしかないだろうという飲み応えになっている。

 この味わいは私の好みである。少し前に都内某所でフレンチとともに味わったドメーヌ・ルイ・レミの1972クロ・ド・ラ・ロッシュ(ドリンキングレポート未掲載)もこのクロ・デ・リュショットと同じ味わいであった。言うなれば、お爺さんが孫の為に残しておいたワイン。力強さや果実味は遠い昔に失ってはいるものの、本当に孫に伝えたかったのはこの味わいなのだと、思いは募る。静かに、そして時の重なりの妙を楽しみたいものである。

 1972クロ・ド・ラ・ロッシュは油断していると味わいはすっかり衰え、梅干風味に後退してしまう。今回のクロ・デ・リュショットもグラスを揺すったり、ぐるぐる回転させてはせっかくの祖父の思いは伝わらない。ブラインドで味わうには余りにも儚すぎる。このワインを十二分に熟知した上で、本当に静かに味わいたいものである。

 半年前に試飲されたときの評判と、実際にドリンキングしたワインは違うワインなのだろうか。古酒ゆえボトルバリエーションの確立は高くなるし、飲む環境(温度・グラス・試飲方法など)によっても、ワインは味わいも趣も劇的に変えてくる。それがワインであり、それが古酒を味わう楽しみでもある。半年前のワインは自分で経験していないため、比較はできないが、どんな味わいだったのだろうかと想像するのもワインの楽しみのひとつである。


以上
 


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