モメサン
試飲日 2001年11月17日
場 所    都内某所         
照 明 カバーつき白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Mommessin (Morey-St-Denis)
Vintage 1992
1993
テーマ クロ・ド・タールの夕べ        
ワイン Clos de Tart
 

<1992>
  黒系果実味果実香。やさしい味わいにして、今がまさに飲みごろの逸品。ぐぐっとくるうまみ成分と、9年の歳月を経て丸みを帯びた上品な味わいが印象的である。うまい。まだ熟成の途中という感があるが、個人的な好みからすれば、果実味を残しつつ熟成の頂点を思い描けるまさに、この瞬間が飲み頃かと思われる。これ以上時間を置くと、熟成の下り坂にさしかかるリスクも大きくなり、まだ上り坂の頂上が見え隠れしている頃合の、この味はちょっと幸せである。否。かなり幸せである。酸味を利かした料理にも合い、会話がとても弾むワイン。特級クロ・ド・タールの実力を思い知りつつ、豊かに食卓が彩られている。感激の一杯。


<1993>
 ううう。もっと凄い。これは偉大なモンスターワインかもしれない。色合いは、1992よりもさらに濃くしたような深みのあるルビー色。香りはビターチョコを感じつつ、焦がしたお菓子香から焼いた砂糖まで、甘く豊かな香りである。より上品で、リッチで、深いワインである。クラシックタイプに仕上げられた上品な辛口は、とてもエレガントである。複雑な濃縮感と自然の甘さ。丸みを帯びたタンニンに思わず頬が緩む。きれいな果実味を残しつつ、これから頂上目指して熟成しますという意気込みを感じ、活きのいい力強さが心に届く。今飲んで良し、5年後飲んで良し、10年後はどんな姿になっていることだろう。心踊る。グラスを持つ手は、心の中で拍手大喝采をしていたりする。
 鼻から抜く息の甘さ。うまみ成分が眉間に集中し、そこから脳の真髄まで一直線に貫くパワフルさである。圧倒される余韻は顔周辺に漂いつづけ、感慨にふける溜め息は、これもまたたまらなく豊か。こんなクロ・ド・タールを戴こうものなら、モレ・サン・ドニの虜になったも同然である。かつて荒々しかったであろう力強さと上品な優雅さが、絶妙なバランスで調和し、ジュブレシャンベルタンとシャンボールミュジニに挟まれた地理的情景が目に浮かぶ。モレ・サン・ドニここにあり。大感動の一杯(ほんとは数杯)は最後の雫まで、私に心地よい動揺を与えつづける。感謝である。


<お礼>
 今回のクロ・ド・タールはボジョレーヌーボーを楽しむ会を主催してくださった某ご夫妻のご提供によるものである。某ご夫妻には日頃より大変お世話になっており、この場を借りて感謝申し上げます。あのラフィットは今も心に刻み込まれています。また楽しい夕べを共有させていただいた某ご夫妻ジュニアたち、某妹ご夫妻と某同僚ご夫妻にもお礼申し上げます。また誘ってくださいね。1997の極上の白を、横浜市某所に持っていきます。


<クロ・ド・タール>
 モレ・サン・ドニ村の特級ワイン。クロ・デ・ランブレイとボンヌ・マールの間に位置し、ボジョレーやマコネで巨大ネゴシアンを営むモメサン(巨人ジョルジュ・デュブッフに次いで売上を誇るという)が単独所有している。7ha余りの畑は極上の立地である。この特級畑がブルゴーニュを代表しうる理由は、その由緒の正しさにある。資料によれば1250年以来葡萄の面積は不変であり、シトー派の修道尼僧によって守られてきた。1789年のフランス革命により没収され、今日の所有者モメサンに至るまで単独所有が守られてきた特異な存在である。畝づくりも他の畑と異なり斜面に沿って水平になっているので、遠目にも存在感をアピールしている。

 1998クロ・ド・タール(マグナム)


以上


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