アンベール
試飲日 2002年09月22日
場 所    神奈川県某所       
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOC赤ワイン   
生産者 Domaine Humbert Frere (Gevrey-Chambertin)
Vintage 2000
テーマ アンベール2000
ワイン Gevrey-Chambertin
 
<ジュブレ・シャンベルタン 1級 ポワスノ>
少し冷やして抜栓後すぐINAOグラスへ。液温16℃。これはやさしい色合いだ。まるで新鮮なイチゴを絞ったばかりのような、透明感のある薄いピンク色と表現したくもなるルビー色。エッジにムラサキはまったく無く、透明的でもある。香りは、やはり新鮮なイチゴ系。若干、磯の風味も感じられ、甘草の印象も僅かだが感じられる。口に含めば、これまたやさしい味わい。新鮮な果実味が優先して、スッキリした酸味とミネラリーな食感、そして後からようやく追いついてくるタンニンが、滑らかな味わいの中に少しだけジュブレ・シャンベルタンの風格を連想させる。全体的に甘めの味わいだが、媚びたところは無く、スッキリとした後味させ感じさせる。余韻こそ長くは無いが、ジュブレ・シャンベルタンを小さく上品にまとめた感もあり、一風変わった味わいを楽しめたりする。

 リーデルソムリエシリーズ(通称ポマールグラス)に注げば、INAOと基調は同じにしつつも、よりそれぞれのパートの輪郭を際立たせる味わいだ。

 はてさて、これはジュブレ・シャンベルタンの村名ワインであるが、その個性はアペラシオンを不明にする。某女史をしてダニエル・ショパン系のやさしさと表現されるように、濃くって強い荒々しい印象があるジュブレ・シャンベルタンの個性よりも、ピノ・ノワールが持ち得るやさしさを基調としているからだ。雑味感が無く、きれいな味わいであるが、同時に飲み手に戸惑いを与えるワインでもある。

 しかるに、このアンベールを飲むとき、従兄弟のクロード・デュガとベルナール・デュガ・ピィの両巨頭を引き合いに出し、王者ジュブレシャンベルタンの個性を期待するとき、そのいずれにも該当しない新しい個性に戸惑いすら覚える。

 お。時間と共に甘草が前面に出てくる。甘草は南ローヌのヴァケラスの急斜面に無造作に生えていて、その時嗅いだ思い出が強烈にフラッシュバックする。磯の風味にマッチして、やさしいながらもしっかりとした存在感を示している。

 個人的な情報を付け加えるとすれば、ドメーヌ・アンベールのエマニュエル氏と私はお友達関係にある。ドメーヌを訪問した時に、息投合し、2001年のACジュブレ・シャンベルタンの樽のひとつに日本語でワイン名とドメーヌ名を書かせて頂いた仲だ。「熊ぞうさん」と呼びたくなる風合いにして、親日家でもあるエマニュエル氏。今宵、我が家で再会したような、そんな不思議な感覚に、なんともいえない感情が芽生えてくるから不思議だ。兄のフレデリック氏とはカーブ内で挨拶しただけなので、よくわからないが、兄弟で従兄弟の両デュガに追いつき追い越せを狙っているらしい。

甲子園のような表札 エマニュエル・アンベール氏 書 = にしかた


 ドメーヌ・アンベールはイギリスの批評家クライヴ・コーツによって2000年のスーパースターの一角に指名されたらしく、今後の動向に注目したい造り手のひとつだ。ちなみに前夜、某所で2000ジュブレ1級・エストーネル・サン・ジャークを堪能させていただいた。さすがこのアペラシオンの筆頭に数えられるだけのことはある。なかなか興味深い体験をさせていただいた。某氏に感謝である。余談ながらこの一級については、軽く一杯飲みながらその裏話を語りたいところである。結構笑える話があったりするので、ご一緒させて頂いたときのお楽しみにとっておこうと思う。

 ところで1999という偉大な年のアンベールはパッとしなかった。確かに2000年は確固たる個性を持っている。2001年はどうなのか。とりあえず2001年は樽から全てテイスティングしているので、市場に出てきた時に比較して、大いに楽しみたいところである。


以上



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