J.A.フェレ
試飲日 2000年12月10日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine J.A.FERRET (Fuisse)
Vintage 1996
テーマ プイィ・フュイッセのモンラシェ。
ワイン Pouilly-Fuisse Tournant de Pouilly
Cuvee Hors class
 

<味の印象>
 濃い黄色はいかにも南のシャルドネを彷彿させる。トロみたっぷりの豊かさには、飲みやすさが身上のピュイイ・フュイッセのイメージを一掃させるのに十分だ。まさにこの地区のモンラシェと言わしめる実力を思い知る。口に含めば一層豊かさが感じられ、飲み応え充分である。時間の経過と共に現われる焦がした香は、高級ワインが持ちうる豊かさの証明でもある。

 プイィ・フュイッセはマコネ地区のワインとしてはサンベランと同様、高値で取引されるが、このワインは更にその倍以上の価格がついている。コート・ド・ボーヌ地区のいくつかの有名畑よりも高い。しかしこの芳醇な味わいは、納得するのに余りある。直後に味わったメゾン・ルイ・ラトゥールのムルソー1級ジュヌブリエール1995と比べても全く遜色ない。それどころかインパクトの強さでは勝っているともいえる。ACもビンテージも違うため比較すること自体、意味がないのは承知しているが、通常そういう言い回しは、このワインを低く見がちな時に言うべきコメントであって、格下のACを賞賛する言葉ではない。この貴重なワインを味わえたことに喜びを感じつつ、マコネ地区の新たなワインの出会いにちょっとうれしい。
 このワインは初心者にではなく、マコネ地区のワインを飲み込んだ人に味わってもらいたいワインである。今までのこのACに対する認識(自戒の念もこめて)が覆る可能性もあるし、世界中の市場で探したくなる衝動に駆られるワインでもある。シャルドネ種の違った一面を垣間見るのに十分すぎるほどのワインである。大変おいしい。


<J.A.フェレ>
 ロバート・パーカーはこのドメーヌに最高の五つ星をつけ、賞賛を惜しまない。なるほどである。飲めば納得できる。そもそもこのピュイィ・フュイッセというマコネ地区の地区名ワインは難しい。世界的に知名度も高く、マコネを名乗るより断然高値で売れる。そのため大量生産されやすく、水っぽいワインになりがちで、名前に惹かれて買うと結構がっかりさせられる。しかし、このフェレや、シャトーフュイッセ、ギファン・エナンなどの優秀な造り手によるワインは今回の例をみるまでもなく秀逸である。もちろんこのドリンキングレポートのジャン・リケールも見逃せない存在である。
 このドメーヌの創設は1762年であり、伝統あるドメーヌのひとつである。マダム・フェレ婦人の才能により、この地区のトップを維持しつづけているが、彼女の生死は不明である。娘のオデットが経営を任されているが、その彼女にしてもかなりの高齢のはずで、娘自身の生死も危ぶまれるほどの年齢だという。少し文献を探してみたい。
 このドメーヌをトップたらしめるのは、なんと言っても畑の場所の優秀さにある。ワインは畑であり、その良し悪しがワインの味わいを決定するといっても過言ではない。それに加え、古木と低収穫に醸造技術がプラスされ、この低く見られがちなACに於いてさえ、ドメーヌ・J.A.フェレは五つ星を獲得するのである。ロバート・パーカーの味覚の鋭さに共感しつつ、その豊かな味わいを堪能できたことは、この上ない幸せである。

 以上


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