エチエンヌ・ソゼ
試飲日 2000年12月23日
場 所    神奈川県内某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Etienne Sauzet (Pulingy-Montrachet)
Vintage 1992
テーマ エチエンヌ・ソゼの傑作。
ワイン Puligny-Montrachet 1er Cru Les Folatieres
 

<味の印象>
 黄色が濃い穏やかな金色。テイスティング温度でのサービス(室温)のため、燻したへーゼルナッツ香が強烈に鼻腔を刺激する。豊かにして複雑。その複雑さには嫌味がなく、現れる香は全てに於いて私を魅了する。マロンフレーバーも見え隠れしながら出番を見計らっているし、チョコレートも甘さを感じるミルクもある。チョコレートと栗をふんだんに使ったショートケーキをワインにしたような錯覚に包まれる。
 味わいはきりりと引き締まっている。十分なとろみ感と豊かな香のイメージで口に含むと、あまりのシャープさにビックリさせられる。間延びすることなく、酸味とアルコールのバランスがよく、奥行きのある飲み応え。果実味が熟成により芳醇さを加えつつ、それでいて新鮮さも失われていない。膨大な銘醸白ワインを飲みつづけた先輩をしてベスト5に入る凄さという。なるほど。このワインはすばらしい。8年の熟成を得て、シャルドネが登りつめた頂点かもしれない。世界を虜にするシャルドネの表現力がグラスに満たされている。今回のテイティングは大感激と共に、大感謝である。ちなみに1992年のブルゴーニュの白はグレートビンテージである。


<エチエンヌ・ソゼ>
 フランスの相続は過酷である。この村の優れた造り手であるエチエンヌ・ソゼが他界し、ドメーヌは孫婿のジェラール・ブードに引き継がれた。しかし娘の嫁ぎ先のジャン・マルク・ボワイヨ(ヴォルネイ)が相続権を主張し、均等分割が原則の法律に則り、このドメーヌは1/3に縮小してしまった。小さくなりすぎたためドメーヌとして存在できなくなってしまった。そこでブードはドメーヌの旗を降ろし、ネゴシアン会社を設立した。そのため造られたワインが自社畑からのものか、ネゴシアンとして購入した葡萄、ブドウ果汁からのものなのかは分からない。AOC法の盲点を突いた知恵の結晶であるが、同時にドメーヌ表記はできなくなってしまったのだ。
 今回のワインにもドメーヌ表記はなく、世界ワイン大全によれば19991年ビンテージからとの情報を裏付けていた。そしてパーカーの世界のワインによればこのフォラティエールは他社畑からのワインであるようだ。しかし、そんな情報を蹴散らすかのようにこのワインはすばらしかった。この偉大なワインの前では、ドメーヌに関する情報もかすんでいる。しかしこのほろ酔いが覚めたとき、偉大なワインに相続という難問が立ちはだかる現実が、少しだけやるせない気持ちにもさせた。

以上


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