ジョルジュ・ルーミエ 1996
試飲日 2003年9月13日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOC赤ワイン
生産者 Domaine G.ROUMIER (Chambolle-Musigny)  
Vintage 1996
テーマ 最後のクロ・ヴージョ 2年後  2年前
ワイン Clos Vougeot

<特級 クロ・ド・ヴージョ>
 
抜栓後すぐINAOグラスへ。落ち着きのある色合いは、熟成感を伴ったガーネット色に輝き、いとも美しい。香りは閉じていて、かすかにバニリンオークと黒系果実のニュアンスが漂う程度。口に含めば、クラシカリーな辛口の味わいで、するりと喉を通っていく・・・。あれれ。モンスターワインのはずなのに、なんだか水のような滑らかさに戸惑いを覚えようとすると・・・・。ガツン。

 このワインは飲み込んだ後からが凄かった。あたかも水のごとくの味わいは、飲み込むと同時に、ぐぐぐぐっと押し戻るバックテーストに思わず背筋も仰け反り、体全身がうまみ成分に包まれたごとくの錯覚を覚え、いつまで終わることのない永遠系の余韻に、しばらくは時の流れが中断するのである。

 完璧である。このうまみ成分と、長い余韻は、トップ・オブ・クロ・ド・ヴージョの名に相応しく、末永く心に刻まれるに違いない。あまりにも壮大な味わいは、幼い頃のあの風景を思い起こさせるのだった。冬の逗子海岸、渚橋あたりから波の立たない穏やかな海を眺め、遠くに江ノ島を望み、そしてその向こう側に冬化粧をした富士を望む。そんな風景を思い起こす。ただ眺めるだけならば、美しいで終わるはずの風景。しかし、裸足になって海水と接触した瞬間、冷たさの中に、1万メートルの深さにも及ぶという途方もない海の深さと大きさを肌で感じた、そんな幼い頃の経験にこのルーミエの1996クロ・ヴージョは重なってくる。美しさの中に人知を超えた恐怖にも似た心揺さぶられる味わいに、ちょっと動揺も隠せなかったりもする。

 いずれにしても、このクロ・ド・ヴージョは美しい。今後も10年単位で熟成を重ねると思われる味わいは、ブルゴーニュの奇跡とも表現したい味わいで、もう再会することもなさそうな、そんな切なさを感じさせたりする。今宵の出会いに感謝である。


以上
 


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