ルイ・ジャド
試飲日 2004年05月22日
場 所    神奈川県某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Domaine Loius JADOT (Beaune)
Vintage 1996
テーマ 銘醸
ワイン CHAMBERTIN-CLOS DE BESE Grand cru

<特級シャンベルタン・クロ・ド・ベース>

 抜栓後すこし待ってINAOグラスへ。深みのある黒系ルビー色。香りは熟した黒系果実をベースにしながら熟成のニュアンスを感じさせつつ閉じ気味である。口に含めば、充実した重みのある味わいで、酸味とタンニンのバランスが高レベルで調和し、エレガントな複雑さとスケールの大きさを感じさせてくる。さすがは天下の大銘醸ワインである。

 ロブマイヤのブルゴーニュNo.3グラスへゆっくりと注ぐと、時間と共になめし皮やスパイス香、煙草が妖艶チックに加わって、僅かに一瞬のことだがパリの朝市のジビエ売り場で感じた強烈な動物香が現れ、それはいつの間にか穏やかな動物のニュアンスに変化し、飲み手を戸惑わせたりするから不思議だ。(私のグラスを某氏らに渡すと、ジビエ香はないとの指摘を受けたりした・・・)。そして余韻はとてつもなく長く、大方の偉大なワインがそうであるように、飲み込んだあとにやってくる幸せ感と度肝感がすばらしいのである。

 しかし、このワインはふたつの点で私を悩ませる。まずは抜栓時期だ。1980年代の古酒を飲むと、ワインは20年以上寝かさなければならないような気がし、偉大な年の偉大な畑の名家が造るワインを、8年の歳月しか待たずに飲んでしまうことに戸惑いを覚えるからだ。偉大なワインは今飲んでも美味しいに違いはないが、8年の歳月だけでは飲み手にその本領を発揮させない要素があり、出会ったときが飲み頃を身上とするものに大きな揺さぶりをかけてくるから面白い。

 そしてもうひとつは注ぎ方だ。今回はデカンタをしないために、ある程度勢いをつけて注いだが、(もちろん雫の跳ね返りがグラスの内側に飛び散るほど大胆ではなく・・・)、ゆっくりと静かに注いだ時と明らかに味わいの違いが感じられたからだ。ゆっくりと注いだ方が明らかに繊細で微妙なニュアンスが表現されるが、8年しか経っていない偉大な年の偉大な畑の名家の造るワインが、これほど繊細でよいのだろうかと悩ませるのだ。1996を過信するというのではなく、ワインを如何に滑らかに注ぐかでワインの味わいに絶大なる影響を及ぼすかと思うと、1996に対するイメージが大きく変わってくるから面白い。いわんやグラスをぐるぐる回すなんてことは懲役刑に等しい行為のような気がして、どうやらこのワインはブルゴーニュワインの繊細なニュアンスをどう伝え、どう味わうべきかに一石を投じるワインになったようである。

 この経験をブルゴーニュの繊細さへの挑戦と位置づけたくなる逸品だ。


以上
 


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