ブリュノ・クレール
試飲日 2001年2月24・25日
場 所    神奈川県内某所           
照 明 白熱灯・蛍光灯
種 類 フランス AOCワイン
生産者 Domaine BRUNO CLAIR (Marsannay)
Vintage 1998
テーマ ブリュノ・クレールの1998
ワイン Chambolle-Mugigny Les Veroilles
Morey Saint-Denis En la rue de Vergy
Savigny-Les-Beaune 1er Cru LA DOMINODE
 

<シャンボール・ミュジニー・レ・ボロワイユ>
 桜色系のピンクをかなり奥に忍ばせたルビー色。熟成のガーネットとも違うなにやら不思議な色合いである。これぞピノ・ノワールとも言うべきやさしい甘いアロマは思わず頬も緩みがち。口に含めばやさしい口当たり。やさしいがしっかりと重みもあり、唾もじんわり滲み出る。うまい。うまみ成分の形が見える。うまみが口の周りに漂っている。ACシャンボール・ミュジニーの特徴と言えば、赤系果実味を基調とし、やさしく女性的なワインの典型である。そうか。まさにこのワインのことかと思わず納得である。村名畑でこれほどの実力を見せつけるとは。驚きと共に感動である。
 畑は村名格ながら特級ボンヌ・マールの山側に隣接する。


<モレ・サン・ドニ アン・ラ・リュ・ヴェルジ>
 紫をエッジに持つ黒系のルビー色。シャンボールとの差がこれほど顕著に表れるとは、ただただ脱帽するのみである。甘いチェリー系の香にはより深い趣が加わって、よりエレガントである。強い。確かに強い。このワインの強さを全身が悦んでいる。この味わいはACモレ・サン・ドニの特徴そのものである。この濃縮感のためか奥行きのある深みは、静かに飲み手にその実力を伝えてくる。とっておきの夜に、凄いワインが飲みたくなったらこのワインを手に取ろう。大変おいしいワインである。
 畑は村名格ながら特級クロ・ド・タールの山側に隣接し、前記のレ・ボロワイユの北側で接している。


<サビニー・レ・ボーヌ ラ・ドミナード>
 このワインは難しい。飲み方によって凄まじいほどに味わいを変えるからだ。今回は二日連続で3本のワインをテイスティングしたが、上記の2本はほぼ同一の味わいだったのに対し、このサビニー・レ・ボーヌはまったくその味わいを変えていた。驚きである。
 初日は抜栓後1時間半経ってから試飲。焦がしたチョコレート香はコート・ド・ニュイの名だたるグランクリュに接する上記のワインを遠い彼方に吹き飛ばすインパクト。バレンタインデーの放課後、始めてもらった手作りの生チョコを友達に冷やかされ、「こんなのちっとも嬉しくねえよ、普通だよ、ああ腹減ったから食っちまお」と聞こえるように呟いて一口で頬張った時に感じるあの甘さ。本当は少しずつ、少しずつ大切に食べたかったのに、ああ、何で一口で食べちゃったんだろう。いまでもあの焦したチョコレートが懐かしい。口中に充満する溢れんばかりの甘さ。嬉しい。
 口に含めば、やや温度が低いためか、しっかりとした果実味。もう少し温度が高まれば、やはりチョコレート味になるのだろうか。味わい深く、飲み応え十分である。これぞサビニーのトップワイン。コート・ド・ニュイの素性の確かな畑を押さえ、堂々とした味わいは感激の極みである。
 二日目は抜栓後20分で試飲。あの郷愁が再び・・・。そう思ってウキウキしながらグラスを口元へ。んん。おかしいな。チョコレートがない。あのチョコレートは夢だったのか。チョコをもらったのは友達のほうで、自分は彼を冷やかして一思いに食べさせた方だったのか。どっちだったかな。分からなくなってくる。香は沈みがちで、今ひとつパッとしないが、味わいそのものは同じ基調である。果実味がしっかりと伝わってきて、うまみ成分に包まれる。ただあのアロマがないことに寂しさを隠し切れなかった。

 しかしである。このワインは一級畑指定といえどもコート・ド・ボーヌの地味なワインである。にもかかわらず、コート・ド・ニュイの特級に隣接するワインの後に飲むべき実力を持っている。この地味なACはややもすると780円で特売されがちだが、ルロワのナルバントンと比肩し得るその実力は、この村の隠れた実力と共に、やはり造り手の偉大さでもある。一級ジャロンの小区画であるレ・ドミナードはジョセフ・ロティシャルムシャンベルタンに次ぐ古木であり、樹齢100年を数える。ちなみにこの村のトップ3はドメーヌ・ルロワ ドメーヌ・ブリュノ・クレール そしてドメーヌ・モーリス・エカール。


<ブリュノ・クレール>
 ロマネ・コンティと並び賞されたマルサネ・ロゼを造りだしたクレール・ダウの後を継ぐドメーヌ。クレール・ダウは1985年に相続問題から分裂。シャンベルタン・クロ・ド・ベズなどの畑はルイ・ジャドに売却されたが、その孫にあたるブリュノが祖父の名声を取り戻すように見事に復活させている。畑はマルサネからサビニー・レ・ボーヌまで広範囲に及んでいる。広範囲に及ぶドメーヌは眉唾系が多いが、このブリュノ・クレールはもちろん例外である。特級はシャンベルタン・クロ・ド・ベズとコルトン・シャルルマーニュ。看板ワインはマルサネ・ロゼと今回のサビニー・レ・ボーヌ。
 ブルゴーニュのテロワールを感じたくなったら、このドメーヌのワインを飲み比べたい。

以上


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