シャン・クロテ
試飲日 2004年10月30日など複数
場 所    都内某所 ジャンと共に
照 明 スポットライト
種 類 フランス ブルゴーニュ地方赤ワイン
生産者 Jean CROTET (ER) (Levernois)
Vintage 2001
テーマ ジャン・クロテ (ER)
ワイン Savigny-les-Beaune Les Planchots
Vosne-Romanee Les Raviolles

<サビニ・レ・ボーヌ レ・プランショ>
 
抜栓後1時間ほど待ってINAOグラスへ。非常に明るい色調で、淡いルビー色が美しい。これぞ薄いピノ・ノワールの極致とも言うべき色合いだ。香りはバニリンオークをうっすらと感じつつ、赤系果実がベースに、優しく香っている。口に含めば、この村らしい酸味を感じ、ミネラル感も心地よい。そしてその特徴的な酸味のあとで、ワンテンポ遅れて襲い掛かってくるのは、強烈なうまみ成分。梅がつお系のお出汁の味わいは、クラスを超えたインパクトを有し、すこぶる余韻も長い。幸せの一杯かもしれない。薄い色合いにして、この優しいうまみ成分を上品に表現されると、言葉をなくし、しばしグラスを抱えてボーっとするから、これもまたピノ・ノワールの大いなる魅力なのだと思ったりする。時間と共に炙った昆布のニュアンスも登場し、甘酸っぱい、なんとも馴染む味わいが心地よい。美味である。

 このワインはデカンタして2時間待ってから楽しんだことがあり、このときも酸味が強調されつつも、たっぷりとしたうまみ成分に包まれ、しばし至福の時を過ごしたのだった。


<ヴォーヌ・ロマネ レ・ラビオーユ>
 
室温のまま抜栓後すぐINAOグラスで試すものの、いわゆるガッチガチという表現も似つかわしいほど硬い味わいで、箸にも棒にもかからない状態。そこですぐにデカンタをして、INAOグラスに注ぐものの、強烈なセメダイン香が全くとれず、別のINAOグラスに移し、もう一度最初のグラスに戻し、それでもまだ、硬く閉じまっくているので、三度INAOグラスに戻してから、リトライすると、セメダイン香の陰に隠れてはいるものの、イチゴやフランボワーズの果実実が現れ、バニリンオークと共に、アジアンチックなスパイス香が漂い始めてくる。口に含むと、硬さの中に滑らかな味わいを探すことができ、酒質の高さに納得しつつ、さすがはヴォーヌ・ロマネと感じることができる。うまみ成分もたんとあり、今はまだ貝に閉じこもってはいるが、いずれ数年後、満面の笑みで再開できる予感を感じたりする。サビニーと飲み比べれば、それぞれの場所の個性も浮かび上がり、知的な遊び心もくすぐってくれるから面白い。

 飲み頃予想を立てるなら、最短でも10年間は待ちたいところだが、この市場最高級の硬さから推測するに、真の本領発揮は「飲み手の死後以降」と思わせる節もある。このワインは自分が生きた証として孫の代に残すか、自分でやっぱり飲むなら、もういつでも飲んでもいいようにも思われ、あとは飲み手の意識の問題のような気もしてくる。飲み手が知的好奇心をフル活用して、デカンタの方法、グラスの選択、温度設定の調整をはかり、ここぞといわんばかりに、ガツンとワインに挑戦したい夜に、心して望めば、いろいろな表情をこのワインは見せてくれることだろう。

 今宵はかなり悪戦苦闘をしたが、そのためか、それぞれのグラスは違うワインの成長を見守ることになり、あまい干しイチヂク香が出たグラスもあれば、でなかったグラスもあり、ここにブルゴーニュの魅力と難しさを知るのだった。

 なおこのワインは、ボーヌ近郊のオーベルジュのオーナーであるジャン・クロテが、フェルマージュ契約を結ぶエマニュエル・ルジェに造らせたワインで、本来はオーベルジュ内で消費されるはずのものが、なぜか日本にやってきたワインである。

 今宵の出会いに感謝である。


以上

 


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