ミッシェル・ニーロン
試飲日 2001年6月24日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 自然光 (梅雨時の夕暮れ)
種 類 フランス AOC白ワイン
生産者 Domaine Michel NIELLON (Chassagne Montrachet) 
Vintage 1998
テーマ ニーロン登場
ワイン Chassagne Montrachet Clos de la Maltroie

<飲み方>
 
抜栓後18時間ほど経過した後に試飲。こんな特殊な飲み方は通常ありえないが、ニーロンの個性を鑑みて、なんだか利にかなっているように思えるから不思議である。昨夜の残り分を冷蔵庫で保管されていたため冷やし気味ではあったが、梅雨どきゆえテイスティング温度になるまで、そんなに時間は要しなかった。今回の出会いは某美人講師の配慮によるもので、改めて感謝の意を表したい。感謝です。


<味わい>
 なんと表現すればいいのだろう。青リンゴのアロマは冷やし目の温度設定ゆえらしいが、白ワインにして乾いた土壌香を感じるのは初めての経験である。白系の果実味を感じるものの、メインには麦わらというよりも乾いた草をほのかに感じ、何やら通好みを予感させる香りである。口に含めば重い味わい。華やかさのかけらも感じないが、その重厚さは偉大なワインのあり方を示している。

 重い。水分を感じさせないこの飲み応えは何故だろう。ワインなのに水が欲しくなる。水がなければ飲み込めない固体感がある。なにか本物の草の塊を口の中でもぐもぐして、ようやく飲み込んだような、そんな感覚である。うまい、というよりすごい。こんな重みのあるワインはそうそうない。料理と合わせるには、この重さは馴染めないかもしれない。いや合うかもしれない。飲み干した後に口の中に溢れ出す唾が尋常ではない量だからである。どぼとぼと音を立てて流れ出す唾は、このワインがうまみ成分の塊である証明であり、長く続く余韻は、ニーロンの世界にはまったまま、しばらくは抜け出せそうになかったりする。いい気持ちである。果実味が奥に隠れつつも、しっかりとうまみを伝えてくるところはさすがの一言である

 スティーブン・タイザーの書によれば、ニーロン曰く「1998は飲みやすい」という。んん。違うぞ。こんな飲みにくいワインはちょっとない。こんなにも喉に引っかかり感を感じるのに、なぜ飲みやすいのだろう。不思議である。

 夏は赤よりも白ワインが飲みたくなる。されどこのニーロンのシャサーニュ・モンラシェは夏場は遠慮したい。寝苦しい夜に、このワインは似合わない。夏はすいっと飲めるマコネかロワールを楽しみたい。またはSPドライな夜も多そうだ。ミッシェル・ニーロンはおだやかな秋口、否、晩秋の月夜に飲みたくなるような、そんな風情を思い描ける。ススキの揺れに月見饅頭を想像した時、このワインの出番がくると思うのは、多分私だけだろう。共感してくれる友がいれば、なんだか少しうれしいぞ。

 それにしても抜栓後ほぼ一日たっても、まったくへたることなく頑固なまでの硬さを伝える表現力には脱帽である。オイリーなとろみではなく、繊維質的な重みに乾杯である。


<ミッシェル・ニーロン>
 ドメーヌ・ラモネに次いで、シャサーニュ・モンラッシェを代表する造り手。小規模ドメーヌゆえ生産量は少なく、日本で出会えたことは奇跡に近い。ロバート・パーカーも5つ星をつけて絶賛しているが、なるほど飲めば納得である。今回のワインのように独特の個性を堪能できる貴重な造り手である。看板ワインは特級シュバリエ・モンラシェと特級バタール・モンラシェ。ちなみに1996の両者はともに99点であり、無茶苦茶高そうである。


以上
 


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