平衡感覚と体力を養う手軽なトレーニング方法
雪山での滑落や、岩場でのスリップ事故を防ぐために、余裕のある体力と平衡感覚(バランス)を養い、より安全・快適な登山を楽しみましょう。
専門的な技術や体力作りについてはガイドブックなどでたくさん紹介されていますので、ここでは手軽にできて、かつ、効果的なトレーニング方法を紹介します。
山で
ペットボトル・トレーニング
低山でのハイキングなど、余裕のある山行ではペットボトルに水を入れて、重量をコントロールしながら歩くトレーニングです。2リットルのペットボトル1本の水で、2kgになります。自分の体力にあわせて適当な本数を用意してください。
トレーニングのために、ザックに山道具を入れて重くした場合、疲労した時に荷物を捨てることが出来ません。ペットボトルの水なら、疲労に応じて適当な量を捨てられます。喉がかわいたら飲んでしまいましょう。
環境にもやさしく、水分補給にも役立つペットボトルなら一石二鳥です。頂上に着いたら、余った水を全部捨てて身軽に下山も快適です。もちろん、ペットボトルは持ち帰ってください。
休まずに歩きましょう
中高年齢層の登山は“超ゆっくりペース”でOKです。出来るだけ休みを取らないで歩いてください。
ヨーロッパなどの登山者はほとんど休みません。4時間でも5時間でも頂上を目指してひたすら歩きます。日本人のように「1時間歩いて10分休み」というスタイルはほとんどありません。ですから、仮に日本人が5時間ほどかかった登山でも、ヨーロッパの人たちは4時間で終わります。
いろいろな山行の途中で、元気にダッシュして30分で休憩を取っているパーティをみかけます。一見、元気でよさそうですが、これではいくら急いでも目的地に到着するころには“亀”のパーティにも負けてしまうでしょう。それに30分程度の歩行では体が慣れないうちに休むことになり、次の登りがより苦しくなってしまいます。ちょっと歩いては休憩、ちょっと歩いては休憩、の悪循環に入ります。
町で
階段はつま先立ちで
ビルの中などではエレベーターやエスカレーターを使わず、階段を登ってください。それも足裏全部を使わず、つま先だけをステップにかけてゆっくりと登ってください。つま先での登行にはバランスが要求され、同時に足首を強くします。
トレーニングになって、かつ階段の使用料は無料ですから。
電車の中では座らない
電車に乗ったら、座席に座らず、吊革にもつかまらないで立っていましょう。そして自分がおいた足の位置を動かさず、電車が揺れても、ブレーキをかけられても、頑張って上半身のバランスで自分の姿勢を維持しましょう。
この姿勢で新聞、雑誌などを読みながら長時間我慢ができれば、かなりの平衡感覚が身につきます。通勤・通学など電車に乗る時は、絶好のトレーニングと思い、くれぐれも空いた座席に突進して座り込むようなことのないようにしましょう。そんなパワーがある人なら、座らなくても大丈夫です。それに、こんなに良いトレーニングができても電車代は同じですから。
学校の鉄棒の上を渡る訓練などもありますが、短時間のトレーニングではあまり身につきません。
自転車に乗りましょう
毎日の買い物などを利用して、距離を決めて自転車に乗りましょう。自転車のペダル漕ぎは、登山に使う筋肉のトレーニングになります。ただ、訓練ですから 1~2キロメートル程度ではダメ。個人差はありますが、自分に負荷がかかる程度、たとえば「汗をかく」「心拍数が上がる」程度の距離を走りましょう。
自転車は、変速ギアがついていない自転車がベターです。変速ギアのついた自転車なら、上り坂でもギアチェンジを行わないでください。そして、出来るだけスピードを抑えて、ゆっくりと走ってください。加速のついた状態や下り坂は、ペダルに負荷がかからずトレーニングになりません。
また、低速走行は平衡感覚(バランス)を養ううえでも効果的です。低速でペダルを漕ぐと、倒れないようにバランスを要求されます。部屋にあるトレーニング用の自転車は、体力アップには役立ちますが、走らない自転車です。走らない自転車にバランスはいりません。
体力をアップし、平衡感覚(バランス)を養うためには、変速ギアのない走る自転車がいいでしょう。安上がりだし。
家で
テレビを見ながら屈伸運動をしましょう
たとえば30分、あるいは100回、ゆっくりと立ったり、しゃがんだりしましょう。これが意外と疲れるものです。
だから、1年も2年も継続した人は、寝転んでお菓子を食べながらテレビを見ていた人よりも絶対に効果的です。
テレビを見ながら片足立ちをしましょう
好きな30分ドラマでも見ながら、終わるまで片足で姿勢を保ちましょう。次のドラマでは逆の足で。長く続ければかなりバランスがよくなります。
もちろんテレビを見ながらでなくてもいいですよ。
注意:毎日継続することが肝心です。
天気が悪いから明日にしよう・・・
いつでも出来るから来週にしよう・・・ では、ダメ!
登山用具購入のポイント
皆様からのお問い合わせの中でも一番多いのは、登山用具に関することです。
特に、これから冬山を始める方、岩登りを始める方は、どんな用具をそろえればいいのか迷われることと思います。
以下に、初級者が冬山用具や岩登り用具をそろえるときのポイントと、おおよその金額を記載しています。ご購入時の目安にしてください。
冬山用具
衣類
- 下着上下
綿製は不可、最近主流の新素材が快適です。発熱素材や吸水率の小さいもので、多少厚手であまりきつくないもの
上下で8千円~1万円程度 - 登山ズボン
綿製は不可、最近主流の新素材が快適です。冬は厚手で充分足が上がりしゃがみこんでも窮屈にならないような大きさ
1~2万円程度 - 登山シャツ
綿製は不可、最近主流の新素材が快適です。その他に防寒用としてフリース厚手などのジャケットがほしい、余裕のある大きさを
約2~3万円程度 - 帽子
冬山用、フリース、毛糸の帽子で可。その他に吹雪などに対応するため目出帽が必要
約3~4千円 - オーバーパンツとオーバージャケット
冬用ゴアテックス製、またはその他の新素材でゆとりのある大きさ、冬山防寒と雪対策の必需品。出来るだけ良いものが望ましい。上下約6万円~上を見ると限り無し。冬用雨具のゴアテックス厚手でも可
上下約3~4万円 - 冬用ロングスパッツ
ゴアテックス製、冬用を確認して購入のこと、あまりきつくないものを
約5~7千円
手袋・オーバーミトン
- 手袋は毛または新素材で中厚程度。2~3千円程度
- オーバーミトンは冬用ゴアテックス5本指が便利(防水の良いもの)約1~2万円程度
登山靴
- 1. 冬山対応の3シーズン使用可能な革製登山靴でも可(冬専用靴は使用期間が限られ、重く、履き心地も良くないので、最近の軽量ゴアテックスで可、アイゼン装着が可能なことを要確認。靴を探す前に冬用厚手のソックスで試着し少し時間をかけて店内を歩いてください。途中で違和感など感じたら本番では使用できません。ひもをしっかり締め付けてしゃがみこんでも、かかとが浮き上がらないこと、又常に指先多少動かせる大きさ。ソックスは1枚としてあまり重ねないほうが良い。
約4~6万円 - ソックス(毛または新素材で厚手のもの)約2~3千円程度
ピッケル・アイゼン・ストック
- ピッケルは一般登山用で出来るだけ軽いもの、ブレード部を軽く持ち自然に下げた状態で石突きの先端が床から10センチ程度はなれる長さ。
約1.5~2万円程度(ピッケルバンドも必要です) - アイゼンは縦走用で10本~12本爪、アイゼンバンドはセミワンタッチ式がベター。ワンタッチ式は調整が微妙で使用中外れること有り。必ず登山靴を持参して合わせること。
約1.5~2万円程度 - ストックは通常使用している伸縮するもので可(雪山は先端にリングをつけること)
※夏山で使用している登山用具を見直して、使えるものはできるだけ兼用することも考えてください。
岩登り用具
ハーネス
「シットハーネス」を購入してください。冬のオーバージャケット、オーバーパンツなどの上からでも装着できるように少し大きめのサイズを選び(夏の使用も考えて、薄着の時にゆるすぎるほど大きいものは不可)レッグループ(太もも)のベルトがバックル調整できるものがベター。
約1~1.5万円
ヘルメット
冬の帽子の上からかぶれる大きさを選んでください。
約7千円~1万2千円程度
カラビナ
安全環付き2個。約2~3千円/1個・安全環無し2個程度。約1~2千円/1個
安全環付きカラビナは、HMS型、スクリュー式の少し大きいサイズで、断面形状が丸形のもの。安全環無しは、あまり小さくないものであればOK、あとは好みで選んでください。
クライミングシューズ
購入時「アルパインクライミングに使う」と言って買われるのが良いでしょう。
フリークライミング用のシューズを勧められると、小さすぎ、浅すぎで長時間の使用には無理があります。大きさは日常使用している靴よりマイナス5mm程度、または同じ大きさ程度で基本的には素足ですが、極薄の靴下を着用する場合、できるだけぴったりとフィットするもの(店内で履いていて痛くなるようでは実践では使えません)靴底は他品と比べて多少固めのものが良いでしょう。メーカーについてはあまり気にすることはないので自分の好みで決めてください。
約1~2万円
ソーンスリング(テープスリング)
ソーンスリング(テープスリング)120cmと60cmを各1本
ATC(確保器)
ATC(確保器)とエイトカン(懸垂下降器)各1個 各3~4千円
とりあえず以上のものをそろえておいていただければクライミングでも、冬山のバリエーションでも全て使用できます。あとは必要に応じて購入していけば良いでしょう。