2002年3月1日 16:00〜17:30、日本歯科大学にて「食虫植物の魅力と謎」と題する小宮定志教授のご退職記念講演(最終講義)が行なわれました。
内容は、食虫植物の種類が世界で582種あるという話から始まり、ムジナモとコウシンソウを中心とする日本の食虫植物の特徴の説明と保護の歴史、食虫性の分類別説明、そして最後には1983年からテレビに登場した小宮先生の名場面集の編集ビデオで締めくくられました。昔から全く変化がない小宮先生の姿に笑いがこぼれると共に、ビデオに写された古い日本歯科大学の教室の姿に「懐かしい」という声がしきりでした。
講演は超マクロ撮影されたムジナモの捕虫の様子や、岸壁に種子をこすりつけるコウシンソウの鮮明な写真などがふんだんに紹介され、わかりやすくかつ驚きの連続でした。
大学学長をはじめとする大学関係者、小宮先生の教え子となる国会議員、現役の学生さん、そして、われら食虫植物研究会の会員も10名以上が参加しました。柴田千晶先生も、世話役として大活躍。お疲れ様でした。
講演する小宮教授。なんだか、いつもよりダンディ。 日本歯科大学学長から。
最終講義の内容 〜私も知らなかった初めて聞く話〜
<いったい食虫植物は何種類あるの?>
●食虫植物が世界で何種類あるのか。小宮先生の分類頭では、タヌキモ属の215種、モウセンゴケ属の150種を筆頭に、パエパランツス、カトプシスも含め、2001年12月現在で「582種」という数字が示されました。そのうち、日本には23種が自生しています。(←やはり全種類は言えないなあ)
<ムジナモについて>
●日本を代表する食虫植物であるムジナモとコウシンソウは、牧野富太郎氏と三好学氏によって、1890年に発見された。(ムジナモは5月11日、コウシンソウは8月9日)
●ムジナモは日本固有種ではなく、アフリカ、オーストラリアに自生している。かつてはヨーロッパにも自生していたが、第二次世界大戦の戦禍で絶滅してしまった。(←同じ年だとは知らなかった!)
●ヨーロッパのムジナモは開花しなかったので、牧野富太郎博士が花の解剖図を発表し、彼は世界的に有名になった。さらに1980年に東北大学が開閉のしくみを解明するなどの功績により、日本がムジナモ研究の中心になった。(←牧野さんはムジナモで有名になったんだ。)
●1966年に、小宮教授らの活動により、最後の自生地であった宝蔵寺沼周辺が天然記念物に指定された。これは、周辺の田畑から農薬が流れ込むことを阻止するため、周辺農民に農薬の使用制限を訴えたが、その当時に「米かムジナモか」では勝ち目がなく、周辺一帯を保全地区にするしかなかったからである。(←米と闘ったんだな。)
●ところが、天然記念物に指定されたその年の秋に台風が来襲し、ムジナモの多くが流出し、同時に周辺の田畑から農薬や肥料分が流入し、ほとんど全滅してしまう。食虫植物研究会が保護していた数株を増殖して戻し、現在に至っている。しかし、ほとんど同一株のクローンである点が心配される。(←せっかくの努力が・・・。自然保護は粘り強さが不可欠。)
<コウシンソウ>
●コウシンソウは日本固有の種である。(←これはみんな知っているね。)
●花茎が2本に分かれるが、分岐点にホウがつかない分かれ方をしているため、2つの花は同時に開花する。(←そういえばそうだ!)
●花が終わると、実をつけた花茎が上部の岸壁に種子をこすりつけるように伸びる。(←これは本当に不思議。平地ではどうなるんだろう。)
<食虫植物はいつ頃進化した>
●植物は組織がやわらかくそのまま化石になっていないが、食虫植物の元となる植物は被子植物が進化したときとほぼ同時に現れたと考えられる。しかしこれは種子や花粉の形態を化石から分析した結果なので、実際に食虫性を発揮していたかどうかはわからない。(←そんな細かい研究をするんだ!)
●食虫植物が食虫性を獲得する進化は「収斂進化」だろう。つまり、世界の各地で(別々の植物が、粘液を出すなどの)同じような進化を遂げたのは、世界で同時に食虫性を獲得する機会が訪れたと考えるべきだ。その機会は7回あったと考えている。(←そういえば全世界にモウセンゴケがあるのも不思議。)
<根も葉も同じ働きをもっている>
●(「虫の養分を吸収するならば、なぜ根ではなく葉から吸収するように進化したのか」という質問に対して)ウツボカズラの壷に水をいっぱい入れても翌日にはいつもの所まで水位が下がり、逆に空にしておいても翌日には一定のところまで水がたまっている。前者は葉から全体に水を供給し、後者は根から葉に水が供給されたからである。植物は根も葉も同じ働きをもっている。(←だから葉差しや茎さしもできるんだな。)
<モウセンゴケの粘液は?>
●モウセンゴケの粘液は、もともと排泄物で、それに虫がくっついたのをきっかけに食虫性へと進化していったと考えられる。(←秋に葉の葉脈からしずくが出ていたりする、あれに近いのだな。)
シェ・ダイゴでのパーティ。奥様もご一緒でした。 食虫植物研究会メンバーも参加しました。写真提供:杉浦氏
<感想>
知っているようで、きっちり説明しようとすると意外に説明できない食虫植物。
質疑応答で内容が深まった頃に時間がきてしまって残念でした。専門性の高い話を取り入れていながら、わかりやすくお話される小宮先生の姿に、大変感銘を受けました。
質問も鋭く専門的なものが多かったですが、見事にご説明になり、聴衆の先生に対する信頼感の厚さを推察いたしました。
栽培技術や品種改良のレベルだけでなく、日本の食虫植物研究のこのレベルの高さを、是非海外に知らせたいものです。※以上の文章の文責は全て袖川にあります。