A4stマシントラブル集

INDEX
 A.クラッチが滑る
 B.2速に変速しにくい
 C.フライホイールが空回り
 D.不意のエンスト
 E.マニホールドの緩み
 F.マフラージョイント破損
 G.リンケージトラブル
 H.エンジントラブル

A.クラッチが滑る

 京商製コンバージョンキットの取扱説明書では、クラッチをトレーディング側に組む図が載っていますが、2stと比較して低回転で繋げる必要がある為、この組み方ではどうしてもクラッチの滑りが起きやすい傾向にあります。まるでオートマの様な、エンジンの回転数と車速が同期しない感覚が気になる場合は、クラッチ滑りを防止するために、クラッチを逆向き(リーディング側)に組み替えましょう。「ガツン」とつながる様になり、滑りも改善するはず。それでも駄目なら、若干高価ですが、京商製のベスペルクラッチに交換すると、より滑りにくくなります。

B.2速に変速しにくい

 4stエンジンは回転数が低い為に、ギヤ比をハイギヤ化して2st同等の速度が出せる様に、コンバージョンキットは設計されています。このため、2速ミッションの回転数が2stと異なることになり、2速シューにかかる遠心力が小さくなる傾向にあります。よって、シフトポイント調整ネジを幾ら緩めてもシフトチェンジしない場合、調整ネジに入っているシフトスプリングをより弱いものに変更する必要があります。FW−05RではFW−05S用のソフトスプリングがパーツ販売されているので、それに交換すると改善する場合があります。VoneRRRでは、コンバージョンキットに非常に柔らかいスプリングが同梱されていますので、まずはそのスプリングで調整しましょう。

C.フライホイールが空回りする

 新品のうちは発生しませんが、4stにコンバートして何度も走っていると、上記のトラブルに出くわすときがあります。4stのフライホイールは、エンジンクランクシャフト先端のDカット部分を勘合させて周り止めを行っていますが、4stエンジンは回転ムラが有るため、特に低速ではフライホイールがエンジンが回るたびに揺さぶられてしまいます。この繰り返しの力により、Dカット部分と勘合する部分が徐々に摩耗し、最終的に勘合部分が無くなってしまうのです。こうなると、幾らパイロットシャフトをきつく締めても、駄目。防止策としては、定期的に増し締めするしか有りません。2stならパイロットシャフトが緩めばフライホイールが空回りしてすぐに分かりますが、4stの場合は構造上、若干緩んだぐらいではDカットのお陰で空回りしない為、分解してパイロットシャフトを増し締めしてみないと緩んだことが分からないのです。安全を期すなら、1個はスペアのフライホイールを持っておくのが吉。

D.不意のエンスト

 実はこのケース、原因が多岐にわたり、簡単には完治出来ない場合もあります。過去に経験したケースを列記しておきますので、参考にして下さい。

T.暖気運転不足

 タペット調整で、クリアランスを非常に少なくした時に起きやすい様です。クリアランスが全くなく、逆にわずかにバルブが開いている状態だと、始動直後は圧縮漏れが起きてしまい、回転が安定しない為です。しかし、十分に暖気運転をし、エンジンが適正温度まで暖まると、ほとんどがアルミで出来ているエンジン本体の方が熱膨張が大きく、自然とタペットクリアランスが広がり、バルブが絞まる様になり、安定して回る様になります。特に冬場に起きやすい様です。

U.ニードルの絞りすぎ

 適正なニードルから若干絞り過ぎたときに、突然エンストするケースがあります。ごく僅か(数分)にニードルを戻して様子を見ましょう。

V.燃料チューブに泡が混じる

 エンジンカーは全般的に振動がトラブルの元になりやすいのですが、4stは特に顕著。燃料タンクをがっちりネジで固定していると、振動で燃料が泡立ってしまいます。燃料タンク固定部分は上下にダンパー用のOリングを入れて、ネジを緩めにしておき、フローティングすると泡立ちが少なくなります。また、燃料チューブの途中にフィルターを入れると泡を分離する効果がありますが、燃調に影響が出るかも。

W.パーコレーション(燃料がキャブレターに届くまでに気化する現象)

 4stエンジンは走行中には、非常に高温になります。燃料チューブの取り回しの途中で僅かにエンジン本体に接触する部分があると、そこで熱せられた燃料が一気に気化してしまいます。燃料チューブの取り回しは、エンジンに接する事がない様、大きく迂回させるか、結束バンドなどで固定しましょう。夏場に絞り過ぎると、希にキャブレター自体が高温になり、キャブレター入り口でパーコレーションを起こすケースもあります。この時は完全に絞りすぎなので、すぐに走行を止め、エンジンをさまし、再度走行する時はニードルを甘くして下さい。

E.マニホールドの緩み

 走行直後のマニホールド付近の温度を測定すると200度を超える場合もあるほど、マニホールドは高温に晒されます。この時、マニホールドアダプタをねじ込むヘッドはアルミなので、熱膨張が大きく、アダプタよりも広がってしまい、緩みが発生するようです。アダプタのネジには必ずネジロック剤を十分塗布し、万が一緩んでも簡単には回らない様にしておきましょう。それでも緩みが発生する場合は、マニホールド先端を支えるステーなどを自作してマニホールドが回転しない様にすると万全。また、マフラーステーを出来る限り強化し、マニホールドに余計な力が掛かりにくくすることも重要です。FW−05ではオプションのマフラーステーをシャーシとの間にバネ座金を挟んで固定すると緩みにくく、VoneRRRでは、オプションのミドルシャフトホルダを使用するとマフラーステー一体形状なので、保持剛性が上がり、効果的です。

F.マフラージョイント破損

 4stは排気温度が非常に高い為、その排気に晒される部分は劣化が進みやすい環境になります。4stのマフラージョイントは、マフラーとテフロンアダプタの間に間隔があると、マフラージョイントのその部分が劣化し、硬く変質していきます。そのまま放っておくと、普通に走行しているだけで亀裂が入ってしまうときがあります。出来れば、マフラーとアダプタをくっつけておけば、ジョイントが排気に晒されにくくなり、このトラブルは起きにくくなります。当然、過度にニードルを絞った状態でエンジンを使用していれば、排気温度も上がり、ジョイント破損が起きやすくなります。

G.リンケージなどのトラブル

 4stのキャブは、吸気の流れが均一ではなく、常に脈動を起こしています。よって、燃料の吹き返しが起きやすく、、どうしてもキャブレター周辺から燃料が漏れて来ます。FW−05では特にリンケージ周辺や右リヤアッパーアーム取り付け部周辺に燃料が掛かりやすく、砂やゴミなどが集まり、摩耗が非常に激しくなる傾向にあります。こまめにチェックし、摩耗が激しいときはすぐに交換する様にしましょう。さもないと、走行中に突然エンコンリンケージが外れたり、リヤサスアッパーロッドが外れて大けがするかも。

H.エンジントラブル

 参考までに、過去に経験したエンジントラブルを列記しておきます。

・バルブ折損
 特に4stにチェンジして初期に多く経験。りとるてっくのコースは、4stにとってはかなりの高速コース。FW-05では、どうしてもトップエンドで限界まで回すことになるので、高回転の負担がバルブ折損に影響するようです。こういうケースでは、出来るだけハイギヤ化し、回転を出来るだけ下げるのが一番効きます。また、エンジン自体の改善も進んでいるのか、ここ1年は折損しなくなりました。

・プッシュロッド変形
 これも希に経験するトラブル。プッシュロッドの熱処理不良と思われますが、タペット調整ネジと接する部分がキノコ状に塑性変形が起き、プッシュロッドが短くなってしまうのです。何度調整しても0.2mm位大幅にタペットクリアランスが広がってしまう場合、一度ロッカーアームを取り外し、プッシュロッドを点検してみて下さい。万が一、大幅に短くなっている様なら、OSさんに送付して対応して頂きましょう。

・フロントベアリング緩み
 メンテナンス時にフライホイールを取り外した際に、フロントベアリングがケースに対し、固定されているか確認しましょう。かなり過酷な条件で使用すると、オーバーヒートによりクランクケースが広がり、ベアリング圧入部がすかすかになってしまう時があります。こういう状態では、まずフロントベアリングが煤けています。オーバーヒートによりクランクケースに漏れた高温の燃焼ガスが行き場を失い、ベアリングの僅かな隙間を縫ってフライホイール側に出て来ている状態を示しています。こういうときは、思い切ってOSさんに送って、OHして貰うのが吉。

 総括すると、定期的な分解点検を行い、圧縮低下などのへたりが見られたら、OHして貰うのがおすすめ。エンジンコンディションを出来るだけキープするのが、毎回快調に走る秘訣と言えます。

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