朝青龍の復活劇
朝 西 知 徳


大相撲が大好きである。高校野球を指導するようになってからは、テレビ中継を見る機会が減り、国技館に足を運ぶこともできず、小中学生のときのように熱狂することはなくなったが、時間があるときにたまにテレビで見ると、やはり大相撲はおもしろいものだと思う。

 小学生のとき、輪島と北の湖の両横綱の強さは際立っていた。たび重なる千秋楽結びの相星決戦、水入りの大一番など、輪湖時代とよばれたそのころの両者の対戦は、何ともいえない緊張感があり、かっこよかった。

当時の大相撲は、プロ野球とならぶ花形スポーツであり、ほかにも貴ノ花(初代)、若三杉(のち二代目若乃花)、魅傑、旭國、三重ノ海、高見山、麒麟児、富士櫻、鷲羽山などの人気力士に支えられて、蔵前国技館は連日の大入り。大相撲には、いつでもワクワクさせられた。

絶頂期を過ぎたと思える横綱の優勝は、いつ見ても感動的だ。輪島の14回目となる最後の優勝も、北の湖の24回目となる最後の優勝も、力をふりしぼっての賜杯には、涙があふれた。

初場所の朝青龍の復活劇(23回目の優勝)は、「輪湖」以来の感動的なシーンだった。異国の地で、孤独に耐え、「負けたら終わり」という覚悟で土俵に上がっていた朝青龍を見ていたら、涙が出てきた。対する白鵬も見習うべき敗者であった。

 私も12年前に、知人の誰もいない米子にやってきて、一年一年を真剣に戦ってきたように思う。土俵際に追いつめられても、孤独に苦しめられても、ずっとグラウンドに立ちつづけてきた。今の私には、朝青龍の気持ちが少しだけ分かる。

懸命に戦っているときに、そうでない者から、ああだこうだと言われれば腹も立つ。挑発的な態度にも出てしまう。口先だけの人間は必ずいるのだ。朝青龍は、彼らに酒を注()いで迎合するよりも、つらぬくことで抗戦を決め、背水の陣を引いた。正しかったと思う。

 朝青龍にとつては、これが最後の優勝にはならないであろう。大鵬のもつ32回の最高記録に少しずつ近づいていくにちがいない。私も朝青龍の反骨心を見習って、己の信念にもとづいた野球をやりぬくつもりだ。


とじる