キャプテンであるということ
朝 西 知 徳

 

春の地区リーグ戦でのできごとである。同点で迎えた最終回、わがチームの攻撃は一死三塁。一打サヨナラ勝ちの場面となった。三塁走者はキャプテンの彼だった。バッターがレフトへ飛球を放った。タッチアップ。彼はヘッドスライディングから、歓喜のホームをつかんだ。ところが、塁を離れるのが早かったというアピールにより、勝利を逃すこととなった。目を真っ赤にする彼に対して、私はなぐさめの言葉をかけようとはしなかった。「キャプテンとして、十分に苦しめ」。

15名の卒業部員は、個性の強い集団であった。それぞれがもつ価値観の地ならしを図ろうと、彼はデコボコになっているチームに、黙々とトンボをかけつづけた。それでも、チームに規範は見つからなかった。しだいに彼は孤独になっていった。

歴代のキャプテンは、自らのパーソナリティーに応じて、それぞれのやり方でリーダーシップを発揮しようとした。プレーでチームを引っぱる者、話術でチームをまとめる者、元気でチームを盛り上げる者、さまざまであった。「おまえはどういうやり方で、リーダーシップを取ろうとしているんだ」。

ある日のゲームで、彼はファールフライをつかもうと懸命に走った。勢いあまって電柱に激突。ガンと鈍い音がした。グラウンドが凍りついた。静寂のなか、彼がゆっくりと起き上がった。額から血がタラタラと流れていた。その姿のまま、全力でポジションに走ろうとした。彼は「根性」でチームを引っぱることに決めたのだった。

「みんなに嫌われることを怖れて、正しいことができないのなら、キャプテンをやめちまえ」。何度も彼に叫んだ。そのたびに彼は、必死にくらいついて、大きくなっていった。

最後の夏の大会。背番10をつけた彼をスタメンで起用した。彼の打球は、弾丸ライナーとなり、外野の芝生席に突き刺さった。彼にとっての初ホームランだった。ダイヤモンドを全速力で一周してきた彼を、ナインは満面の笑みと拍手で称えた。チームがひとつになった瞬間だった。みんな卒業おめでとう。革命は血を流すという。どうか勇気ある人生を。


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