遺産分割の手続き ![]()
神戸の行政書士 すがぬま法務事務所
目 次 遺産分割とは
分割協議がまとまらないとき
遺産分割の手続
遺産分割のやり直しはできるか
遺産分割の態様
遺産分割後に遺言がでてきたら
遺産分割はこうする
遺産分割の禁止
法定相続分や遺言と異なる遺産分割
● 遺産分割とは
相続が開始して相続放棄も限定承認 をしないで3カ月が
過ぎると、単純承認したことになり、被相続人が死亡時に有
していた一切の権利・義務を相続人が相続分に応じて共同
相続することになります。
この遺産の共有状態を解消して、個々の財産を各相続人
に分配し取得させる手続きを、遺産分割 といいます。
遺産分割の時期については、相続開始後であればいつまでにしなければならないという期限はとく
にありません。被相続人が遺言で分割を禁止していないかぎりいつでも自由に分割を請求することが
できます。
しかし、相続税の配偶者の税額軽減の適用は遺産の分割が前提となっていますし、また、あまり時
間が経ちますと遺産が散逸したり、相続の権利のある関係者が増えていくなど、複雑になってきますの
で、なるべく早い時期に分割協議を行うべきです。
なお、遺言があり、そこに遺産の分割方法の指定がされている場合には、それに従うことになります。
しかし、遺言にすべての財産についての分割方法が指定されていれば問題ありませんが、分割方法の
指定のない財産については、やはり相続人全員の話合いで分け方をきめなければなりません。
【判例紹介】
昭和30年5月31日 最高裁判決
相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にする
ものではないと解すべきである。
● 遺産分割の手続
遺言による分割 被相続人が遺言で分割の方法を定めているときは、その指定に従って分割します。
また、遺言で分割の方法を第三者に委託することもできます。
協議による分割 遺言がない場合や、あっても相続分の指定のみをしている場合、あるいは、遺言
から洩れている財産がある場合には、まず、共同相続人の間の協議できめます。相続人全員の合意
があれば、必ずしも遺言による指定相続分や法定相続分に従う必要はありません。、また、ある人の取
得分をゼロとする分割協議も有効とされています。
調停・審判による分割 協議がまとまらないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所
に遺産分割を請求することができます。家庭裁判所への請求は調停、審判のいずれを申し立てても差し
支えありませんが、通常はまず調停を申し立てることがほとんどです。調停が成立しない場合は当然に
審判手続きに移行します。調停・審判による遺産分割
● 分割の態様
遺産が現金や預金であれば簡単に分割できますが、土地や建物となると一筋縄にはいきません。遺産
を具体的に分割する方法としては、次のような方法があります。
現物分割 たとえば「土地と家屋は妻に、株式は長男に」というように遺産をあるがままのかたちで分
割する方法。
換価分割 不動産など、遺産の一部または全部を売却して、そのお金を相続人で分ける方法。
代償分割 債務負担の方法による分割ともいいます。遺産の全部または一部を現物で相続人中の1人
又は一部の者に取得させ、その代わりに、他の相続人に不足分を代償金として支払うという方法。
共有分割 共有分割は、個々の遺産を共有する方法です。この方法は、分割を先送りすることから、
特別な事情がある場合を除いて適当な方法ではありません。
代償分割した場合の相続税
※代償分割する場合には、遺産分割協議書にその旨を記載しておくこと。
相続人 相続税の課税対象 代償金を支払った相続人 相続により取得した財産−代償金 代償金を受取った相続人 相続により取得した財産+代償金
● 遺産分割はこうする
相続人を確定する
遺産分割協議は、相続人全員の参加が大原則です。相続人の一人でも欠いた遺産分割協議
は無効です。また、遺言による包括受遺者や相続分の譲受人がいるときは、それらの者も協議に
参加しなければなりません。
相続人を確定するには被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍などをもれなく
取寄せます。これによって戸籍上の相続人が明らかとなります。相続人の調査・確定
◆ 胎児 は相続については生れたものとみなされます。しかし、胎児には法定代理人がいません
ので、胎児が生れるのを待って協議することになります。この場合、母親が共同相続人であれ
ば子の代理はできませんので、特別代理人の選任が必要です。胎児と遺産分割
◆ 相続人のなかに行方不明者や生死不明者がいる場合は、家庭裁判所の許可などの手続が
要になります。相続人の一人が行方不明のとき
◆ 相続人の中に 未成年者 がいるときは、未成年者の親権者が法定代理人として協議に参加す
ることになりますが、その親権者も共同相続人である場合は、利益が相反することになります
から、このような場合は、家庭裁判所にその未成年者のために 特別代理人 を選任してもらっ
て、その特別代理人が分割協議に加わることになります。
◆ 意思能力が不十分な者がいる場合は一定の手続きを経て、この者に代わって協議に参加す
る者が必要になります。成年後見制度と遺産分割
相続財産を確定する−遺産の範囲
ある財産が被相続人の遺産なのかどうか、相続人の間でもめることがよくあります。この点につ
いて話し合いがつかなければ、家庭裁判所の審判や通常の民事訴訟で争われることになります。
なお、遺産分割の対象となるのは、被相続人が有していた積極財産(プラスの財産)だけで、相続
債務(マイナスの財産)は対象とはなりません。
債務の相続と遺産分割
遺産の評価をする-財産目録を作る
遺産分割協議を行うにあたっては、あらかじめ被相続人が残した遺産のすべてを洗い出し、財産
目録を作ります。こうすれば話合いもスムーズに進みます。
遺産分割の際の財産の評価は、分割の協議をする時点の時価(実勢価格)でするのが原則です。
遺産の評価でとくに問題となるのは不動産です。とりわけ土地は路線価、固定資産評価額、公示
価格、基準地価とかといわれるものがあり複雑です。→ 一物四価
もっとも、分割の対象になっている不動産をいくらに評価するかを、相続人の間で合意できればそ
れでもよいのです。
相続の開始から現実に遺産分割するまでに相当な期間が経ち、その間に遺産の評価が大きく変
動していることがありますが、現実に分割する時点で評価するものとされています。
全員が分割内容に合意する
遺産分割協議は共同相続人全員の合意が必要です。この場合、必ずしも共同相続人が一同
に会して合意しなければならないものではありません。
相続人が遠方にいるなど、実際にはむつかしい場合があります。このような場合、例えば、相続
人の1人が分割案を作って相続人の間を持ち回って承諾を得ることでもかまいません。
また、持ち回りが困難な場合、相続人1人に1枚ずつ作成してそれに各相続人が署名捺印すると
いう方法でもかまいません。この場合は、「遺産分割協議証明書」とします。
遺産分割協議書を作成する
全員の合意により協議が成立したときは、それを証する「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書は後日、不動産の登記や銀行預金などの名義変更をする際に必要となります。
国交省地価公示/都道府県地価調査
国税庁/路線価図等閲覧
● 法定相続分や遺言と異なる遺産分割 相続人間で話合いの結果、それが法定相続分どおりでなかっても、その遺産分割は有効です。
長男に相続させるために他の相続人の取得分をゼロにする場合などが典型です。
また、遺言がある場合に、相続人全員の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることも可能
と考えられます。ただし、遺言執行者がある場合においては、遺言執行者を加えたうえで成立させ
るべきとされています。
● 分割協議がまとまらないときは
相続人どうしで分割協議がまとまらないとき、または協議ができないとき(相続人のひとりが分
割協議に応じないときなど)は、各相続人はその分割を家庭裁判所に請求することができます。
これには調停と審判の2通りの方法がありますが、実務上は先に調停手続をすすめ、調停が
成立しなかった場合にはじめて審判手続きに移行するのが通常です。調停・審判による遺産分割
遺産分割調停申立書の記載例
● 遺産分割のやり直しはできるか
遺産分割協議は相続人全員の合意により成立します。いったん成立すれば効力が生じ、無効
や取消の原因がない限り、原則としてやり直しすることはできません。
また、遺産分割協議で相続人の1人が不動産を取得する代わりに別の相続人に代償金を支
払うと約束していたのに、なかなか履行してくれないというような場合であっても、遺産分割協議
を解除してやり直しを求めることはできないとされています。この場合は調停や訴訟で実現を求
めることになります。
では遺産があとになって新たに出てきたという場合はどうなるのでしょう。この場合も、その遺産
について新たに協議をすることになります。ただし、もれていた財産が一部の相続人に隠匿され
たものであったり、遺産全体の中で大部分を占めるときは、従前の遺産分割協議の無効を主張
することができます。
以上のようにいったん成立した遺産分割協議は原則として解除できませんが、相続人全員の
合意があればその合意によって先の遺産分割協議を解除し、新たに遺産分割協議をすることが
できます。
● 遺産分割後に遺言が見つかったら
遺言があることを知らないで遺産分割をしてしまったらどうなるであろうか。
遺言の存在を知らないで遺産分割が成立したとしても、遺言の内容に反する部分はやはり無効
ということになります。しかし、相続人全員が、その遺言を無視して遺産分割するという合意があれば
その合意が優先されます。しかし、相続人のうち1人でも異議が出た場合は、あらためて遺言に沿っ
た再分割をする必要があります。
● 遺産分割を禁止することもできる
遺言による場合
被相続人は、自分の死後、相続人の間で遺産の分割についてゴタゴタが予想されるようなとき
には、遺言で 相続開始のときから 5年 を超えない期間内 遺産の分割を禁止することができま
す。分割禁止は必ず遺言でしなければなりません。
協議による場合
被相続人が残してくれた事業を相続人が力をあわせて継いでいく場合など、遺産の内容により
ただちに分割しないほうが得策というようなときは、相続人の間で合意すれば、これも 5年 を超え
ない期間内分割をしないとすることができます。この場合、更新も可能です。
調停による場合
相続人の間で協議が調わないときは、家庭裁判所に分割禁止の調停を申立てることができます。
この場合も、分割禁止の期間は 5年を超えない期間 を定めるべきものとされています。
審判による場合
特別な事情があるときは、審判で分割を禁止することができますが、その期間は5年を超えること
はできません。「特別の事情」とは、たとえば、相続人の資格や遺産の範囲について争いがある場
合などが多いとされています。
ご相談はこちらへ
このぺージの先頭に戻る