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天然界には少数例ながらトリテルペンが酸化を受けて生成したと思われる変形トリテルペンと称する成分群があり、ごく限られた分類群の植物に分布する。ナツミカンやダイダイなどミカン科カンキツ(Citrus)属の果皮に含まれる炭素数26個のリモニン(Limonine)およびそのグルコース配糖体は代表的なものである。柑橘類の中には苦味がほとんどないものがあり食用とされるが、リモニンが少ないのではなく、リモニンのほとんどが苦味のない配糖体として含まれているからである。生薬オウバク(キハダの樹皮)にも類似の苦味成分オウバクノン(Obakunone)が含まれているが、基本骨格はリモニンと同じであり、これらを総称してリモノイド(limonoid)と称される。リモノイドはミカン科特有の成分群であるが、苦味が強いので果実の商業的価値を下げるものとして好ましくないものと考えられてきた。最近、癌を抑制しコレステロール値を下げる効果があると報告され、健康食品あるいはサプリメントとしての応用の観点からは有用成分として注目を集めつつある。リモノイドの生合成的起源としては、その構造から類推して図3に示すようにダンマラン系トリテルペンから派生したと考えるのが妥当である。分類学的にミカン科に近いニガキ科植物も変形トリテルペンのソースとして知られている。ニガキ(樹皮を生薬ニガキとする)に含まれるクァシン(Quassin)はその代表的なものであり、ニガキの苦味成分でもある。クァシンおよびニガキ科植物に含まれる類縁物質をクァシノイド(quassinoid)と総称するが、リモノイドよりさらに酸化が進んだものであり、炭素数は20しかない。ニガキ科とミカン科の類縁性およびリモノイド、クァシノイドの構造的類縁性を考慮すれば、リモノイドと同じくダンマラン系トリテルペンから派生したものと思われる。一部のクァシノイドに抗腫瘍活性が報告されており、抗癌薬として開発が試みられたこともある。
| 図3 変形トリテルペンの生合成 |
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天然界にはトリテルペンやステロイドの多くは配糖体、すなわちサポニン(saponin)(→構造式一覧リンク)として存在する。オタネニンジンの根、すなわち生薬ニンジンの主サポニンはジンセノシドRg1を始めとするダンマラン系であり、他にオレアナン系を少量含む。一方、トチバニンジンの根茎(生薬チクセツニンジン)に含まれるサポニンは主にオレアナン系でダンマラン系は少ない。他にダンマラン系サポニンを含むものに生薬タイソウ(基原:クロウメモドキ科ナツメの果実)がある。一方、オレアナン系サポニンは天然界に広く分布し、含量の高いものは生薬として有用なものが多く、例えば、オンジ(イトヒメハギなどの根)、カンゾウ、キキョウ(キキョウの根)、ゴシツ(ヒナタイノコズチなどの根)、サイコ(ミシマサイコの根)、セネガ(ヒロハセネガなどの根)、モクツウ(アケビ、ミツバアケビの茎)があげられる。ステロイドサポニンと称するものの大半スピロスタン(spirostane)またはフロスタン(furostane)をアグリコンとするものである(図4)。ステロイドサポニンを含む生薬にはジギタリス、チモ(ハナスゲの根茎)、バクモンドウ(ジャノヒゲの根の膨大部)があるが、天然界には比較的広く分布する。
| 図4 主なファイトステロイド |
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芽が出たジャガイモを食すると中毒を起こすが、その原因物質はソラニン(Solanine)というステロイドに窒素原子が挿 入され、更に配糖体となったものである。すなわち、サポニンアルカロイドともいうべきプソイドアルカロイドで、ソラニンにはサポニンに特有の溶血作用もある。ソラニンのアグリコンをソラニジン(Solanidine;右図)と称するが、C27-ステロイドアルカロイドであり、フロスタンにアンモニアが導入され環化したものと推定される。ジャガイモの属するナス科ナス属(Solanum
sp.)には類似のサポニンアルカロイドが多く存在する。その他、C27-ステロイドアルカロイドはユリ科バイケイソウ(Veratrum)属(ミカワバイケイソウなど)、リシリソウ(Zygadenus)属、バイモ(Fritillaria)属(アミガサユリなど)などから見いだされているが、天然界での分布はかなり限られている。これらはいずれも有毒植物として知られるものであり、特にバイケイソウの仲間は芽生えが山菜として利用されるオオバギボウシと類似するので誤って採取、摂取による中毒事故が多く発生し、時に死に至る例もある。 |