2014年3月に定年退職しましたが、往事の研究活動の記録としてこのページを残します。
 創薬資源学教室は天然資源からシード物質を探索するバイオプロスペクティングを主要な研究テーマとしています。現在、人類が恩恵を受けている薬の多くは高等植物成分とその誘導体、あるいはそれをリードとして創製されたものです。現在、高等植物成分は新薬開発に必要なシード物質のソースとして注目を集めていますが、地球上で最大の潜在的化学物質ライブラリーを構成しているからです。当教室ではあらゆる科学的知見を活用して効率良くシードを探索するための基礎研究を行っています。次表は重要な薬用植物とそれから創製された医薬品のリストです。下線部をクリックして下さい。(update:17.2.20)

天然由来薬物と原料植物 教室員> 旧薬学部全景 02年 03年 04年
      05年 06年 07年 08年 09年
inusafron kusamizuki keshi Digitalis nitinitisou hashiridokoro podophyllum ephedra rauwolfia colchicine irinotecan morphine digitoxin vincristine atropine etoposide ephedrine reserpine
 帝京大学薬学部は平成24年4月1日をもって板橋キャンパスに全面移転しました。しかし、附属薬用植物園及び創薬資源学研究室(移転に伴い教室を研究室に改称)は旧相模湖キャンパスに残留します。上の全景写真は旧時を忍ぶものとしてそのまま使用しますが、旧研究棟はすでに撤去され、現在は社会福祉法人寿栄会「相模湖みどりの丘」の運営する特別養護老人ホームが2015年3月に開所しています。ただし、旧図書館棟は改装されて、帝京大学野球部合宿所ならびに薬用植物園管理室が置かれています。薬用植物園も温室が建て替えられて一新、園内もきれいに整備され、漢方薬・生薬認定薬剤師制度における薬用植物園実習施設として現在も活動しています。2015年3月に圏央道相模原インターが完成し、横浜・茅ヶ崎ほか県南地区との交通の利便性が大幅に向上しました。
 当教室で行っている研究は天然物化学だけにとどまらず、数年前より薬学会・生薬学会などでくすりの文化史に関する発表も率先して行ってきました。これまでに収集した植物試料の薬用情報を調べているうちに、いくつかの和薬(日本固有の薬物で漢薬に対するものです)の歴史的由来についてこれまでの定説に疑問が生じてきたからです。薬用としての利用がどこまでさかのぼるのか文献学的に明らかにしなければならず、当然、検討する資料は和漢の古典医学書や本草書であり、研究としては非常につらいものがあります。時に、万葉集や古今和歌集あるいは源氏物語、枕草子などの古典文学も参照することも少なくありません。これらの古典資料の記述の中には想像もしないような植物情報が含まれていることがあるからです。平成22年2月に「万葉植物文化誌」を刊行しましたが、万葉歌に詠われる植物名を和漢の本草書などの古典資料から解き明かし、それが実際にどんな植物種に相当するのかを明らかにすることを目的としたもので、二十年以上にわたる研究をまとめました。この分野では松田修先生ほか著名な万葉植物学者のすぐれた著作がありますが、本草学分野の検討がほとんどなされておらず、その結果、画竜点睛を欠く結果になってしまったのは否めません。この分野では生薬学ほか薬学の知識なしでは十分な解明ができないことも先人をして本草書などの検討を敬遠させたのではないかと思われます。「万葉植物文化誌」の執筆中に気づいたことは、万葉植物の多くが薬用植物であったという事実です。各植物の文化史的背景を深く詮索することにより、古代から近世までの日本人の生活に植物がどのようにかかわってきたかがおぼろげながら見えてきます。こうした研究が何の役に立つのか疑問をもたれる方も多いかと思いますが、江戸末期には考証学という学問が発達しました。当時は開国か攘夷かをめぐって国論が大きく割れ、経済的にも決して恵まれた時代ではありませんでしたが、こうした先人の地道な積み重ねが明治維新以降の日本の学術文化の発達に大きく寄与したともいわれています。考証学研究の利点は個人で行うことが可能なことです。思えば、わたしがこの研究を始めたのも講座制のしがらみに悩まされ、それから解放されたいがためでした。何事もスピードが勝負の現代にあっては違和感があるかもしれませんが、これぞ学術研究分野における究極のスローライフではないでしょうか。理系と文系の両方をカバーする学際研究ですが、専門外だからといって国文や中文の分野でも手を抜くわけにはいきません。2015年3月にガイアブックスからこれまでの考証研究の集大成として「歴代日本薬局方生薬大事典」を上梓しました。初版局方から現行の第16改正局方(第2追補も含む)までに収載された305種の生薬の基原ならびに歴史的由来を詳細に記述したもので、この一冊で日本の生薬の歴史が俯瞰できるという優れものです。本書の特徴は漢薬だけではなく西洋生薬も同列に扱って記述している点です。そして平成29年度には日本学術振興会科学研究費補助金学術図書の助成を受けて『和漢古典植物名精解』を刊行するに至りました。同書は万葉集のほか源氏物語などわが国の古典文学や、詩経、芸文類聚、文選、全唐詩などの漢籍も引用し、日本・中国の植物文化の共通点や違いにも言及するので、日本文学だけでなく漢文学、そして医薬学分野の研究者にも必携の一冊です。
 以下の特選情報では、メニューの深い階層に埋もれている中から、薬学の身近な話題、授業、研究のほか、薬史学から国文学・漢文学にいたるまで、多様なトピックも紹介します。この中で、「キラ星云々」は薬学とは無関係の国語のトピックではないかと勘違いされますが、これもくすりに少しだけ接点があります(まずは読んでみてください)。実はそれこそ文系の先生方が見落としてきた盲点なのです。薬学は広大な領域をカバーしており、薬剤師の社会的地位を上げるためにも、たとえ異分野であっても少しでも接点があればどんどん情報発信して存在感を高めるべきだと思います。その点、医学会では漢方系のお医者さんは漢文の古医書を読みこなすような多才な人材を輩出し、見習うべきものがあります。六年制に移行して医学系と制度的には同等となったのですからそれこそ一般社会のもとめるところではないでしょうか。


新著「和漢古典植物名精解」(和泉書院、2017.2)を刊行!
新シリーズ・トピック「万葉の地名:「引馬野・安礼の崎」再考」
新著「万葉集 植物さんぽ図鑑」(世界文化社、2016.2)を刊行!
新著「歴代日本薬局方収載生薬大事典」(ガイアブックス、2015.3)を刊行!
新CD-ROM版電子書籍「生薬処方電子事典II」・「緒言」(Office21、2012.12.7)を刊行!
新トピック「古典文学におけるオギ・オバナの区別とススキの語源」
新著「山歩きの草花図鑑」(メイツ出版、2011.3.25)を刊行!
新トピック「アヘンの文化史」(日本薬学会「ファルマシア」2010年9月号掲載)
新トピック「キラ星は"綺羅、星の如く"由来説は本当か」
新CD-ROM版電子書籍「生薬処方電子事典」・「緒言」(Office21、2010.8.6)を刊行!
新トピック「古典文学の"わらび"はワラビにあらず」
新トピック「營實の語源について」(「日本植物園協会誌」2010年3月掲載)
新著「万葉植物文化誌」(八坂書房、2010.2.25)を刊行!
新トピック「本草学・伝統医学の歴史(日本)」
2006年度「教室旅行(沖縄県西表島)」
フィリピンルソン島南部のマキリン山の植物のスライドをお見せします。
国際学会参加の感想「6th Flora Malesiana Symposium」
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加速するIT技術革新と薬剤師業務「class A Field Vol.21 2010」に取り上げていただきました
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