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| 帝京大学薬学部は平成24年4月1日をもって板橋キャンパスに全面移転しました。しかし、附属薬用植物園及び創薬資源学研究室(移転に伴い教室を研究室に改称)は旧相模湖キャンパスに残留します。上の全景写真は旧時を忍ぶものとしてそのまま使用しますが、旧研究棟はまもなく取り壊されます。 当教室で行っている研究は天然物化学だけにとどまらず、数年前より薬学会・生薬学会などでくすりの文化史に関する発表も率先して行ってきました。これまでに収集した植物試料の薬用情報を調べているうちに、いくつかの和薬(日本固有の薬物で漢薬に対するものです)の歴史的由来についてこれまでの定説に疑問が生じてきたからです。薬用としての利用がどこまでさかのぼるのか文献学的に明らかにしなければならず、当然、検討する資料は和漢の古典医学書や本草書であり、研究としては非常につらいものがあります。時に、万葉集や古今和歌集あるいは源氏物語、枕草子などの古典文学も参照することも少なくありません。これらの古典資料の記述の中には想像もしないような植物情報が含まれていることがあるからです。平成22年2月に「万葉植物文化誌」を刊行しましたが、万葉歌に詠われる植物名を和漢の本草書などの古典資料から解き明かし、それが実際にどんな植物種に相当するのかを明らかにすることを目的としたもので、二十年以上にわたる研究をまとめました。この分野では松田修先生ほか著名な万葉植物学者のすぐれた著作がありますが、本草学分野の検討がほとんどなされておらず、その結果、画竜点睛を欠く結果になってしまったのは否めません。この分野では生薬学ほか薬学の知識なしでは十分な解明ができないことも先人をして本草書などの検討を敬遠させたのではないかと思われます。「万葉植物誌」の執筆中に気づいたことは、万葉植物の多くが薬用植物であったという事実です。各植物の文化史的背景を深く詮索することにより、古代から近世までの日本人の生活に植物がどのようにかかわってきたかがおぼろげながら見えてきます。こうした研究が何の役に立つのか疑問をもたれる方も多いかと思いますが、江戸末期には考証学という学問が発達しました。当時は開国か攘夷かをめぐって国論が大きく割れ、経済的にも決して恵まれた時代ではありませんでしたが、こうした先人の地道な積み重ねが明治維新以降の日本の学術文化の発達に大きく寄与したともいわれています。考証学研究の利点は個人で行うことが可能なことです。思えば、わたしがこの研究を始めたのも講座制のしがらみに悩まされ、それから解放されたいがためでした。何事もスピードが勝負の現代にあっては違和感があるかもしれませんが、これぞ学術研究分野における究極のスローライフではないでしょうか。理系と文系の両方をカバーする学際研究ですが、専門外だからといって国文や中文の分野でも手を抜くわけにはいきません。 以下の特選情報では、メニューの深い階層に埋もれている中から、薬学の身近な話題、授業、研究のほか、薬史学から国文学・漢文学にいたるまで、多様なトピックも紹介します。この中で、「キラ星云々」は薬学とは無関係の国語のトピックではないかと勘違いされますが、これもくすりに少しだけ接点があります(まずは読んでみてください)。実はそれこそ文系の先生方が見落としてきた盲点なのです。薬学は広大な領域をカバーしており、薬剤師の社会的地位を上げるためにも、たとえ異分野であっても少しでも接点があればどんどん情報発信して存在感を高めるべきだと思います。その点、医学会では漢方系のお医者さんは漢文の古医書を読みこなすような多才な人材を輩出し、見習うべきものがあります。六年制に移行して医学系と制度的には同等となったのですからそれこそ一般社会のもとめるところではないでしょうか。 |
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