イソフラボンも過剰摂取すると健康障害を起こす
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 タイ産Pueraria mirifica(プエラリア・ミリフィカ)の乾燥根を粉末としたサプリメント「プエラリア(ガウクルア)」には強力なエストロゲン作用成分ミロエステロールのほか、イソフラボンも多く含まれている。これらイソフラボンは、近年、健康の維持や増進という観点で広く注目を集めるようになった。日本人女性は欧米人女性に比べて更年期の障害が軽く、骨粗鬆症や乳がんの発生率が低いことが従来から指摘されていたが、その理由としてダイズを素材とした豆腐や納豆などの伝統食品を多く摂取することがあげられている。ダイズにはイソフラボン誘導体であるダイゼイン(Daidzein)が多く含まれ、軽い更年期障害や低い骨粗鬆症や乳がんの発生率はその女性ホルモン(エストロゲン)作用によるものと推定されている。欧州では、外国人が最も嫌う日本の伝統的食品として知られる納豆がサプリメントとしてスーパーで販売されている(Nattoと称するそうである)ほどで、イソフラボン含有食材に対する関心の高さを象徴するものであろう。最近、健康食品開発業者がイソフラボン含量の高い天然素材を求めているのはそのためであり、その結果ダイズの数十倍という極めて高いイソフラボン含量がある「プエラリア(ガウクルア)」に白羽の矢が当てられたのである。イソフラボンには極めて温和な女性ホルモン作用があり、女性ホルモンの不足によって起こる更年期の不快な症状を緩和する効果があるとされている。また、骨からカルシウムが流出するのを防ぐ、すなわち骨吸収抑制作用も知られているので骨粗鬆症の予防効果も期待されている。後者に関しては、近年、わが国の製薬会社により開発発売された骨粗鬆症治療薬イプリフラボン(Ipriflavone)はイソフラボンをリードとして創製されたという事実がある。では、イソフラボンはどれだけ摂取すれば効果が期待でき、また副作用などの危険はないのだろうか。最近、発売されたイソフラボン含有機能食品では、一日当たりのイソフラボンの適正摂取量を40mg〜50mgとし、豆腐なら150g(半丁)、きな粉なら20g、納豆なら60g(1パック)に相当する量としている。米国でもダイズは健康食品として注目されているのであるが、米国医薬食品局(FDA)では一日当たりのイソフラボン摂取の適正量を60mg(イソフラボン配糖体では100mg)としており、ほぼ一致している。このくらいの量であれば、普通の日本人なら普段は味噌も消費されているので通常のダイエットで十分まかなえる水準である。偏食あるいはその他の理由でイソフラボン摂取が不足気味としても、最近、特定保健用機能食品として販売されているもので補給すれば十分と思われる。では、ダイズの数十倍のイソフラボンを含むとされる「プエラリア(ガウクルア)」にはそれだけの価値があるのだろうか。一部のサイトでは「プエラリア(ガウクルア)」やイソフラボンについて次のような宣伝文句が見受けられる。

  1. 「プエラリア(ガウクルア)」は100%天然のイモを粉末にしたものであり、どんな食べ方をしても害はない
  2. 「プエラリア(ガウクルア)」の主成分イソフラボンは女性ホルモン作用を持つが、ステロイドホルモンとは構造が異なるため、副作用がなく安全である

 上述の文言では、健康によい安全な活性成分イソフラボンが豊富で、しかも食べられるイモだからお腹一杯食べても大丈夫と消費者が誤解する危険性がある。わが国の特定機能食品メーカー、米国医薬食品局(FDA)のいずれもがイソフラボンの適正摂取量を推奨しているのはそれなりの理由があることを忘れてはならない。イソフラボンの女性ホルモン作用は、ゲニステイン(Genistein)でエストラジオールの10,000分の1、ダイゼインではゲニステインの更に数分の1とというレベルにすぎず、ごく軽微であることは確かである。しかし、高含量のイソフラボンの摂取でホルモン関連の障害が顕在化する可能性のあることは、ゲニステインを多く含む牧草を日常的に摂取する家畜の間で不妊症が多発したオーストラリアでの事件を見ても明らかである。通常の食生活ではイソフラボンが過剰摂取される可能性はほとんどないが、カプセル剤、錠剤という剤型をもつサプリメントでは過剰摂取の危険性ははるかに高くなることを念頭に置く必要がある。したがって、「プエラリア(ガウクルア)」はダイズの数十倍というイソフラボン含量が売り文句となっているが、その分過剰摂取という高いリスクを負うことを消費者および販売業者双方が留意しなければならない。さらに、「プエラリア(ガウクルア)」を健康食品として(豊胸など美容の目的ではなく)販売するサイトでは強力なエストロゲン作用をもつミロエステロール(→プエラリア(ガウクルア)は強力なエストロゲンを含むを参照)に言及することはほとんどなく、あってもそれがエストラジオールに匹敵する活性を有することには沈黙しているのは消費者に適切な情報を開示しているとはいえず大いに問題がある。結論としては、科学的見地から推奨されているレベルのイソフラボンを摂取するのに、ダイズおよびそれを原料とする豆腐、納豆などの食材で十分であり、それよりはるかに多くのイソフラボンを含む「プエラリア(ガウクルア)」は少なくともわが国では不必要であるばかりか、強力なエストロゲン作用をもつミロエステロールを含むのでむしろ危険ですらある。ただし、世界には様々な文化圏が存在し、豆腐、納豆やダイズを食する習慣がないかあるいはその歴史が浅い地域もあるので、「プエラリア(ガウクルア)」の有用性を全面否定するものではない。

  1. 2006年2月2日、厚生労働省医薬食品局食品安全部は、大豆イソフラボンを関与成分とする特定保健用食品の安全性評価に関する報告書をとりまとめ中であることを発表し、「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」をホームページ上で公開した。これによれば、平成14年の国民栄養調査による大豆及びその関連製品(味噌、醤油など)の摂取量から試算した結果、大豆イソフラボンアグリコン(大部分はダイゼインである)の摂取量は一日あたり16〜22mgである。但し、報道関係者にはさらに詳細なデータをリークしたようであり、asahi.comによれば、安全なイソフラボン摂取量の上限を一日あたり70〜75mgとしたという。これに基づいて特定保健用食品などで追加的に摂取する安全な上限量を一日あたり30mgとしている。妊婦や幼児に対しては(特定保健用食品などによる)追加摂取を推奨しないとしている。食品安全委員会の専門委員会は大豆イソフラボンの過剰摂取に注意を促す報告案をまとめた。専門委員会によると、