Vol.20   



 宇宙は何でできているのか

素粒子物理学で解く宇宙の謎



東京大学 数物連携宇宙研究機構長  村山 斉(ひとし)



幻冬舎新書  800円(外税)


                                               




                      筆者紹介

 1964年  誕生

 1986年  東京大学理学部卒業

 1991年  東京大学・大学院博士課程修了 専門は素粒子物理学

 2000年  東北大学助手を経て、カリフォルニア大学バークレイ校教授

 2002年  西宮湯川記念賞受賞

 2007年  東京大学数物(数学・物理)連携宇宙機構 [IPMU] の初代機構長

      主な研究テーマ  超対称性理論・ニュートリノ・初期宇宙・加速器実験の現象論



昨年刊行された、著書「宇宙は何で出来ているか」は、累計24万部が売られ、科学書としては
異例のベストセラーになりました。

IPMUの本部は千葉県柏市の東大柏キャンパスにあり、そこでは世界から集まった数学者、物
理学者、天文学者が集まり、「宇宙はどう生まれたか?」「宇宙は何で出来ているのか?」という
素朴な、しかし根源的な問いに対して日夜、研究を続けています。



                     
  背表紙から

物質を作る最小単位である素粒子。誕生直後の宇宙は、素粒子が原子にならない状態でバラ
バラに飛び交う、高温高圧の火の玉だった。だから、素粒子の種類や素粒子に働く力の法則が
分かれば宇宙の成り立ちが分かるし、逆に、宇宙の現象を観測することで素粒子の謎も明らか
になる。

本書は、素粒子物理学の基本中の基本をやさしくかみくだきながら、「宇宙はどう始まったのか」
「私たちはなぜ存在するのか」「宇宙はこれからどうなるのか」という人類永遠の疑問に挑む、限
りなく小さくて大きな物語です。





  序章   ものすごく小さくて大きな世界

  第1章  宇宙は何でできているのか?

  第2章  究極の素粒子を探せ!

  第3章  「4つの力」の謎を解く ー 重力・電磁気力

  第4章  湯川理論から小林・益川理論へ ー 強い力・弱い力

  第5章  暗黒物質、消えた反物質、暗黒エネルギーの謎




                       あとがきから(抜粋)


昔は宇宙の中心だと思われていた地球も、実は太陽のまわりを回る岩のかたまりの一つで、しか
も太陽は銀河系にある何千個というごくありふれた星の一つにしかすぎません。そして宇宙の中に
は同じような銀河が何億個も見つかっています。

そして何かがわかると、また新しい謎が登場します。宇宙の中で、私たちが理解できた原子は
4.4
にすぎません。宇宙のエネルギーの23%を占める暗黒物質は星や銀河ができるもとであり、宇
宙が生まれて
100億分の1秒後にできた未知の素粒子だと考えられています。

これが理解できれば、宇宙ができたばかりの様子が解明できるだろうと期待して、世界の科学者は
、地下に潜ったり、山手線くらい大きな加速器を作ったりして研究を続けています。

また、宇宙のエネルギーの
73%はもっと得体の知れない暗黒エネルギーで、「見えない力」で宇宙
の膨張を後押しして膨張をどんどん加速しています。宇宙が大きくなっても薄まらないこの不思議な
エネルギーは、宇宙に終わりがあるかどうか、宇宙の運命を握っている鍵です。

日本が誇る直径8.2メートルの巨大な鏡を持つ
すばる望遠鏡に新しい装置を取り付けて、宇宙の
膨張の歴史を精密に測り、将来を予測する観測計画を進めているところです。

IPMUではこうした宇宙の大きな謎に迫るため、数学者、物理学者、天文学者が集まって日々がや
がやと新しいアイディアを考えています。いまはまさに「革命前夜」といった雰囲気が漂っています。


この本を読んでわくわくしてくださった読者は、ぜひ素粒子や宇宙の本を読み、さらに知識を深めて
いただければ幸いです。IPMUでは一般向けの講演会、サイエンス・カフェ等でこれからも科学の
最先端の情報を発信していくつもりです。

ウェブサイトの、http://www.ipmu.jp/ja や、非公式なブログ http://ipmu.exblog.jp/ もときどき
ご覧ください。

一方、「こんなことを調べて一体何の役に立つんだ?」と疑問に思われた方もいると思います。実は
文部科学省や財務省、また一般の方々から同じような質問を受けることがありますが、いつもこの
ように答えています。
「日本を豊かにするためです」と。

「豊か」という言葉には経済的な意味もありますが、心、精神、文化の豊かさも含んでいます。人生
の半分近くを外国で暮らした私から見ると、日本はこうした広い意味での「豊かさ」をとても大事に
する国です。これからもそうであってほしいですね。

宇宙や自然の成り立ちを根本から分かりたいという気持ちは人類に共通のテーマです。日本がこ
の大きな謎に取り組めるよう、皆さんの支援をお願いしつつ、私たち研究者も毎日頑張っていこう
と思います。応援をお願いいたします。
 


 
朝日新聞より

      平成23年5月21日(土)  朝日新聞・「フロントランナー」より抜粋


    「この宇宙でただ一人、君たちに”反物質”の話ができる人が来てくれたよ」


米国のある子供向け講演会でこう紹介された。子供から大人まで、聞く者をわくわくさせる宇宙や
素粒子の語り手として、米国でも広く知られているのだ。

宇宙誕生の鍵を握る反物質について、風船の実験も交えながら滑らかな英語で30分語り、子供
たちから質問攻めにあった。

米国暮らしが長く、日本で名前が知られるようになったのは最近のこと。ジーパン姿の若手研究
者、と見えて、本職は東京大学の数物連携宇宙機構(IPMU)といういかめしい名前の組織の機
構長だ。米国のカリフォルニア大学バークレイ校で、36歳で就任して以来、物理学教授も務める


1年に30回は日米を往復しながら、自らのテーマである「超対称性」理論の研究や教育、研究所
の運営、そして宇宙の語り部を務める。

IPMUでは、毎日午後3時、チャイムが鳴る。研究者たちが吹き抜けのホールに集まってくる。
飲み物やお菓子を手に、あちこちに議論の輪ができる。ほぼ半分は外国人だ。

自由な議論をち、米国の研究所でおなじみのスタイルを持ち込んだ。途中で抜ける人もいるが、
多くはたっぷり1時間話し続ける。


分野を越え、国境を越え、科学者と市民の間の壁も越える。まさに新しい研究所の理念を体現す
るトップといっていい。

「業績はもちろん、世界中の研究者と広く話せて、新しいことに挑戦できる若い人、となると、ほか
に適任者はいなかった」と現職への就任を米国まで口説きに行った相原博昭東大教授はいう。

当時43歳の若さ、東大にとっては型破りの人事だった。米国と同じ給料にしたら、東大総長より
高給と話題にもなった。東大を変える起爆剤としての期待もかかる。













 Vol.21


 科学の扉をノックする


小川洋子   


集英社文庫   475円(外税)



                                               



                         著者紹介 


 1962年 岡山県生まれ

 早稲田大学第一文学部卒業

 991年 第104回芥川賞受賞

 2004年 読売文学賞、第1回本屋大賞受賞

 2006年 谷崎潤一郎賞受賞


子供の頃から科学の記事を愛読していた筆者が、宇宙、鉱物、遺伝子など、多様な分野の
スペシャリスト7人を取材した内容を紹介した本です。

それぞれの科学者たちは、「わからない」ことを見つめ、理屈や常識を越えた感性を使い、
世界の謎を一つ一つ解いてきました。彼らと筆者の対話の中には、”気づき”が満載されて
います、ものの見方が少し変わる、科学界への入門書です。



 
第1章  宇宙を知ることは自分を知ること

       渡部潤一さんと国立天文台にて



 
第2章  鉱物は大地の芸術家

       堀秀道さんと鉱物科学研究所にて



 
第3章  命の源”サムシング・グレート”

       村上和雄さんと山の上ホテルにて



 
第4章  微小な世界を映し出す巨大な目

       古宮聴さんとスプリングエイトにて



 
第5章  人間味あふれる愛すべき生物、粘菌

       竹内郁夫さんと竹内邸にて



 
第6章  平等に生命をいとおしむ学問”遺体科学”

       遠藤秀紀さんと国立博物館分館にて


       
 
第7章  肉体と感覚、この矛盾に挑む

       続木敏之さんと甲子園球場にて














 Vol.22







        今こそ、エネルギーシフト

    
 原発と自然エネルギーと私達の暮らし



                   飯田 哲也

                   鎌仲 ひとみ



          岩波ブックレット   500円(外税




                                                 





                       本文から抜粋




            自然エネルギーの可能性とリスク分散効果


今後は、一カ所に巨大な発電センターをつくって、そこがだめになると電力供給が途絶えてしまう、
というようなエネルギーの中央集権的なあり方自体を見直さなければなりません。

今回、あまり注目されていませんが、風力発電は地震にも津波にもまったくダメージを受けません
でした。仮にいくつかの風力や太陽光の発電施設に打撃があったとしても、自然エネルギーは小
規模分散型で数多く全国に散らばるので、日本全国から見ればほとんどダメージはない。

一方で、原発のような大規模一極集中型は、システムとしては極めて脆弱であることが、今回はっ
きりしました。これを機に、小規模分散型の自然エネルギーへの転換を、真剣に考える必要があ
ります。






             成長市場としての自然エネルギー産業



世界全体で見ると、風力発電は毎年30パーセントずつ市場を拡大しており、2010年には原子力
発電の半分に当たる2億キロワット弱に達し、あと3〜5年で原子力の3.8億キロワットをほぼ追
い越すだろうと言われています。

日本の場合、過去10年は完全に「失われた10年」であり、0.4パーセントから0.7パーセントへ
の微増にとどまっているのですが、これからの10年はドイツと同じように水力の10パーセントを
出発点として、自然エネルギーで30パーセントを供給することはけっして絵空事ではなく、実現可
能性のある数字です。


いま200万キロワットの風力を400万キロワットに増やし、太陽光で8000万キロワット、それに
地熱と小水力とバイオマスを加えれば、その目標に届きます。


あとは省エネ・節電です。ただし、今、緊急に実施してきた節電は主に「我慢の節電」だったのです
が、これから加速する必要があるのは、寒くもなく暗くもなく貧しくもならない「快適な節電」なので
す。

そうした「快適な節電」に意識が切り替われば、十分に対応できます。今の時点でもすでに10パー
セント以上節電できているわけですから、20パーセントは減らせるでしょう。家庭用の電気製品を

、一番エネルギー効率のいいものに替えるだけでも、消費電力を4分の1に減らせるのです。不可
能な数字ではないでしょう?

この自然エネルギーと「快適な節電」の二つで、既存電力の供給は、2020年までに半分で済むこ
とになります。






                  スウェーデンから学べること


                         


スウェーデンは1980年に国民投票で脱原発を決め、2010年までにすべての原発を撤廃すると
いう予定でしたが、2008年には現実的ではないということで路線が変更されました。しかし、原発
をこれ以上増やさない、そして一方で風力発電を大々的に増やし、原発三基分に相当する風力発
電を開発することが決定されていました。

原発を持っているスウェーデン最大の電力会社、バッテンフォール社自らのホームページに「政府
に再生可能エネルギーを増やすように」呼びかけてくださいと書いてあったり、風力やバイオマス
の電源を選択して電気を買えるようなサービスをしたりもしている。

消費者が選択することで、社会がより持続可能なエネルギーを増やしていくような仕組みが生きて
いるのです。ドイツは全量買取制度を有効活用して風力発電に市場を大幅に拡大しました。目下、
風力発電で世界一のシェアを持ち、そのおかげで新規の雇用が30万人も増えたのは有名な話で
す。







                       私達が選択する


これまでは誰が政策を決め、誰が原発を運用し、誰が責任をとるのか、非常に曖昧なままに許さ
れてきた。そこには民主主義がなく、市民グループも途方にくれて、自分たちの無力感に苛まれて
きた、というのが現在までの道のりです。

トップにある立場の方は、何が被害を拡大しているのか、実害を及ぼしているのか
どこに欠陥が
あるのかということをきちんと知らせたうえでどの方向に向かって転換していくかという具体的な
提案が必要です。

また市民の力で状況を塗り替えていかないといけない。これは私たち自身でやっていくべきことだ
と思います。