| レインボーリポート要旨 |
教育評論家・法政大学教授
臨床教育研究所「虹」
所長 尾木 直樹
<ご挨拶>
この2〜3年、給食費未納問題を皮切りに、テレビメディアから始まって、2007年に入るや新聞・雑誌などの活字メディアでも「モンスターペアレント」現象が大きくとり上げられるようになりました。言うまでもなく、「モンスターペアレント」とは“無理難題を学校に突きつける親”のことですが、この問題が背景となった新任教員や保育所長の自殺が相次いでは、もはや学校関係だけの問題ではありません。わが国を覆い始めた憂うべき社会現象として、分析・研究しなければなりません。文科省による「教員勤務実態調査」(2006年7月〜12月、全国の公立小中学校2160校の教員約5万人を対象とした調査)でも、小学校の教員の74.9%、中学校教員の70.6%が「保護者や地域住民への対応が増えた」と回答しているほどです。
そこで、臨床教育研究所「虹」では、「モンスターペアレント」の実態とその背景や克服への展望を探るべく、全国9箇所で教師を主対象としてアンケート調査を実施しました(調査は2007年7月から9月にかけて実施。尾木直樹の講演会会場で主催者を通じて参加者に調査票を配布、回収(一部郵送回収)。有効回収数は1247枚、回収率は83.1%)。本調査で集まった750の「モンスターペアレント」事例を検討した結果、「モンスターペアレント」は、「わが子中心型」「ネグレクト型」「学校依存型」「ノーモラル型」「権利主張型」の5つの理念型に分類できることがわかりました。これらに加えて、最近は、暴力型も急増しています。
教師に無理難題や理不尽なクレームをつける「モンスターペアレント」問題は、「モンスターペイシェント」などに広がりをみせ、大きな社会問題となり、国家の危機に発展する兆候さえ感じさせます。事の真相を見誤ると、自虐的な“身内バッシング”にも発展しかねぬ危険さえはらんでいます。小手先の対策では、親をモンスター化させている歴史的、社会的、あるいは学校の構造的な背景を解明することができず、事態は悪化の一途を辿ることでしょう。「モンスターペアレント」は、今日の日本社会における人々の心のありようの反映、もしくは人と人とのつながりが寸断された「困った日本」の象徴なのかもしれません。
では、これらをいかに解決すればよいのでしょうか。その手がかりとして、本報告書の中の「モンスターペアレント」問題の実態と本質を浮き彫りにしている、具体的な「事例」を参考にしていただきたいと考えます。750の事例は、「モンスターペアレント」への対応に苦慮する学校現場や親たちが見聞きした貴重な“実録集”ともなっています。
本調査が、これからの日本社会のあり方や教育の再生を考察するきっかけになれば幸いです。