<風のクロノア>

 「風のクロノア」は1997年12月11日、ナムコから発売されたプレイステーション対応ソフトである。
 ジャンル的にはアクションゲームということになっているが、雪駄はこの作品の本質は「ゲーム機で見る映画」の一種だと見ているので、そういう風に評価していく(アクションゲームとしてみても超一流なのだが、今回は敢えて映画として評価する)。ちなみに評価点は D<C<B<A<SA の5段階が基本。
 私的プレイステーションNo.1ソフト。
 現在はベスト盤として2,800円で売られているので入手はそう難しくないだろう。

○ストーリー評価 SA
 表層部分は単純で、主人公クロノアがお姫様を救い出すというありがちな物語。
 だが、クリア後に明らかになる真のストーリーが圧巻。
 ゲーム世界にクロノアという人物は本来存在せず、クロノアとは異世界から呼び寄せられ偽りの記憶を与えられた存在であり、そしてそれはプレイヤーのなのだと類推させる説明がなされる。
 ゲームをクリアすればその世界にとって必要の無くなったクロノアは、この世界に呼び寄せた張本人で偽の記憶で親友だと思わされてきた相棒の手によって元の世界へと返される。
 つまり、ゲームという夢が醒め、プレイヤーは現実に帰るということである。
 別れに抗い、必死にこの世界に残ろうとするクロノアの姿は涙を誘う。
 ゲームプレイ=夢を見る。ゲームクリア=夢から醒める。
 プレイヤーの行為とゲーム内の出来事が高度にシンクロした、BB氏の言葉を借りれば「残酷なくらいに胸に染みる」物語。
 そして高度に完成されたファンタジー童話である。

○演出評価 SA
 魅力的なファンタジー世界「ファントマイム」を表現する美麗なグラフィック、音楽ともに申し分ない(特にBGMの質と量はすさまじい!)。
 クロノアとして活躍する夢というストーリーを演出するアクション「ゲーム」は単純ながら高度な難易度バランスが保たれており、それ単体で「ゲーム」として超一流。
 「自分がクロノアとなって活躍する夢=パッドを握ってクロノアを活躍させる自分」というシナリオ的な意味と現実のプレイヤーの作業が高度にシンクロし、ストーリーへの感情移入度を深めている。
 また、親友のヒューポーは「ゲーム」中も何時もクロノアと一緒で、しかもアクションの重要なサポートを行うキャラとして描かれている事にも注目。
 設定でなく、実感としてプレイヤーに相棒だと思わせる事に成功しており、困難を乗り越えた相棒に真実を知らされた時のクロノアの感情が説明無しでダイレクトに伝わってくるのは、単純だが非常に強力な演出である。
 全てを理解した後でその本当の意味に気づくオープニングメッセージは卑怯なくらいに上手い。
 ゲーム世界は異世界の現実であると同時にプレイヤーの見ている夢なのだ、と。全ては初めに提示されているのだ。

○総合評価 SA
 よっぽど無理をしないと欠点は見つからない作品である。
 プレイステーションのBest作品を選べと尋ねられたならば、雪駄は間違いなくこれを選ぶだろう。
 一人でプレイするストーリー主体のゲーム映画であれば、総合的な完成度でクロノアに適うものは地球上に存在しないのではないかとさえ思える。

補足。
 gm4号でのBB氏の言葉で誤解している方がいるかもしれないので一応書いておく。
 「風のクロノア」はナムコの過去作品の力など借りなくても楽しめる、間違いなく単体で完成している作品でありナムコファン以外の人間だって楽しめるのだ。
 人を選ばず楽しめる作品なので「なんか難しそうだから」と敬遠する必要は全く無い。
 初代スーパーマリオが楽しめた人間であれば間違いなくこれも同様に楽しめるのだ。