「放牧維新」 レビューの館

    

2007・12・19 読売新聞夕刊 夕景時評 「舌刈り」 西部本社編集委員 加来秀治さん

  「舌刈り」。物騒な話ではない。牛が長い舌で草を巻き取りながら、ちぎるようにバリッ、バリッと食べることだ。
 今月初め、山口市の耕作放棄地で、2頭の黒毛和牛が、まだ緑の残るチガヤを舌刈りしていた。来年3月末まで1・2ヘクタールを刈る。土地所有者の一人、村中勝美さん(62)は「バーちゃんが孫を連れて牛を見に来たりして集落は牛の話題で持ちきり。来年はもっと規模が大きくなるだろう」とほほえむ。
 また、山口県長門市では、山の斜面に広がる棚田に牛が点在していたが、数か月前までは、クズが一面を覆い、荒れ地にしか見えなかったと聞かされた。
 舌刈りは、同県が「山口型放牧」として約20年かけて体系化した。希望者に事前登録した牛を無料で貸し出し、耕作放棄地や休耕田を太陽電池の電気牧柵で囲って、草を食べさせる。2006年度は191頭を登録。前年度比4割増の230ヘクタールで舌刈りさせた。
 舌刈りで見通しがよくなり、鳥獣被害を減らせる。牛は安全・安心の餌育ちとして売れ、飼料・食料の自給率向上にも役立つ。貸し出し頭数を増やして、畜産農家として一本立ちした人や収益を増やしているケースも出ている。
 舌刈りは、島根県や九州にも拡大中。「放牧維新」(家の光協会)でこの方式を紹介したフリージャーナリストの吉田光宏さんは「いざとなれば耕作放棄地の復田も可能で、食料危機にも対処できる」と説く。
 牛に大地に生えた草を食べさせ、育てるのはかつては、ごく普通だった。当たり前のことが、農山村社会を蘇(よみがえ)らせるパワーを備えつつあるのを感じた。

2007・11・15 私の読書日記 作家 池澤夏樹さん

  『放牧雑新』(吉田光宏 家の光協会1600円十税)という本を読んで感心した。言うまでもなくぼくは
牛については百パーセント素人だし、今のところ牛を飼うつもりもないけれど、それでもこの本はイノベーションの実例としておもしろかった。
 頑丈な棚で囲った牧場でなく、田んぱや畑に牛を放せるのは、電気牧柵と殺ダニ剤のおかげ。牛が触るとビリッとする柵は設置が簡単だから、休耕地を次々に放牧に利用することができる。牛が雑草を食べるから草刈りの手間が省ける(「舌刈り」と呼ぶのだそうだ)。休耕しても荒れ地にならないから、いつでも元の田や畑に戻せる。殺ダニ剤は散布するのではなく牛の背中に塗ってやる。
 コストはどれくらいだろうか?一ヘクタールの土地に牛二頭を放す場合で、電気牧柵の分が十九万円、給水施設に十万四千円、その他合わせても四十万円にもならない。近くに小川などがあればもっと安い。電気牧柵の電源はソーラーパネル。山口県ではこのセットを無料で貸してくれるのだそうだ。
 前にハワイに行った時、買った牛乳に「幸せな雌牛から搾ったおいしい牛乳」と書いてあった。
 牛もまた幸せであるべきだし、そのためには畜舎に閉じこめて配合飼料を与えるより、野に放って勝手に草を食べさせる方がいいだろう。イノシシなどの被害も減るし、環境保全にも役に立つ。何よりも異常に低いこの国の食料自給率を高められる。
 試行錯誤を重ねてこういう技術を確立した人たちこそ尊敬に値する。

2007・11・15 公庫月報AFC Forumフォーラム(農林漁業金融公庫)11月号
          農と自然の研究所代表理事 宇根豊さん

 日本型放牧のうれしさ

 実に面白かった。この本の主題を「山口県で始められた日本型放牧です。耕作放棄された水田に電柵を張って、牛を一ヵ所に一ヵ月ほど放牧して、また移動します」。と表現してしまうと、もうわかったような気になる。それでは困るのだ。日本の畜産を本道に引き戻す大きなうねりに育つ理由がつかめないからだ。
 たとえば「舌刈り」という言葉は、「新たな役牛」という言葉にも結びついて、とてつもない位置づけになるだろう。このように新しい価値観を伴った運動では新しい言葉が生まれる。「レンタカウ」という発想にも驚いた。これが制度化されて誰でも借りることができるのだ。
 この本で著者に指摘されるまで、牛なら当然生えている野草を食べるものだと私は思い込んでいた。ところが、与えられたエサしか食べない現在の牛は、野草を「舌刈り」できない。そこで、牛を「馴致」する。ここが面白い。どうやるかは、この本を読んでほしい。
 実は日本の五〇年前と現在では、牛の頭数はあまり変わらない。畦草をエサにしていた時代が、ついこのあいだまでこの国にはあった。しかし、もう村では牛を見かけない。どこかに大量に囲い込まれてしまっている。この寂しさを著者は表現している。ここが大切だ。小規模畜産の重要性は、こうした情景が日本中で見られたことかもしれない。しかも放牧に取り組んだ百姓や住民たちは、牛がいると「なぜか、なごむ」と言って受け入れるのだ。こうした価値に本気で目を向け思想化すべきだろう。そういう意味で著者の着眼は新鮮だ。野芝の田んぼの風景が、全国のあらゆる村で見られるようになる日が来てほしい。
 さて「耕作放棄地の解消にはなるかもしれないが、畜産振興になるのだろうか」と多くの日本人は思うだろう。そういう従来の発想を克服するためにも、この「山口型放牧」に学んでほしい。事態はカネよりももっと深いところから打開されていくものだ。
 もうひとつ大事なことは、ここには従来の試験場や行政とは違うスタイルの仕事が提示されていることだ。「指導」ではなく「協働」になっている。それも読んでもらうしかない。牛への情愛、白然への情愛に包まれ、農業は成り立っていたことを思い起こさせてくれた。

2007・09・15 中国電力関連のエネルギア・コミュニケーションズの企業向け季刊誌『etto』で紹介
           (えっと=広島弁で「たくさん」)

2007・09・03 西日本新聞朝刊 出版ニュース「山口型」を解説 「放牧維新」
2007・08・17 山口新聞 県総合面「吉田さん(防府)『放牧維新』出版
2007・08・17 全国肉用牛振興基金協会「びーふキャトル」9月号
           提言「肉用牛生産における山口型放牧の役割」
           
*東京大学大学院農学生命科学研究科 林好博教授

2007・08・06 時事通信社「農林経済」新刊紹介
2007・08・01 畜産コンサルタント 8月号No.512 新刊紹介
2007・07・01 中国新聞読書面
2007・06・28 JA教育文化8月号
2007・0612 馬の保護管理研究会−ピックス
2007・0605 広島自然観察会会報 121号 図書の紹介
2007・06・04 日本農業新聞 読書面
2007・06・01 山口県農林業情報システム
2007・06・01
 中国新聞社会面「山口型放牧 効果を紹介 防府の吉田さん出版
2007・05・29 ナンバーワン観光カリスマの工藤順一さんのHPでご紹介いただきました

<関連情報>
2008・07・01 日本自然保護協会『自然保護』2008年7・8号のCSR(社会的責任)の特集
「健全な事業が自然環境を維持する」に「放牧で地域の農地と暮らしを守る」を寄稿
2008・03・25 ●『放牧維新』をベースにしたまんが本『耕作放棄地解消!放牧大作戦 舌刈りで一石五鳥』(企画・中国四国農政局 家の光協会)出版の集い
2008・02 "Grazing Restoration," by MITSUHIRO YOSHIDA, '94, was published by Ieno-Hikarikyokai. The book discusses a new grazing system invented in Yamaguchi Prefecture that is restoring agriculture, the environment and local society.-KNIGHT NEWS, Stanford University, John S. Knight Fellowships, February 2008.
2007・10・10
 農業共済新聞 自著を語る
2007・09・03 西日本新聞朝刊 出版ニュース「山口型」を解説 「放牧維新」
2007・08・25 BS朝日「伊藤元重の経済×未来研究所」で山口型放牧を紹介

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