優美な姿と甘味で昔から最高級の海の幸でした。青みをおびた灰色の地に茶褐色の縞(しま)模様があり、 体を曲げるとその縞模様が放射状になって車輪のように見えるので車海老と呼ばれます。 最近は東京湾の水がきれいになったので、最上と言われる東京湾産の車海老も復活してきました。 |
品 種 | 甲殻綱十脚目、長尾亜目(ちょうびあもく)エビ類、クルマエビ科、クルマエビ属。 車海老(ジャポニカ種)の他に大正海老(高麗海老)、 クマエビ、 ブラック・タイガー(ウシエビ)、などがいます。 |
サイマキ | 15cm以上を車海老、10〜15cmのものをマキ、それ以下をサイマキ(鞘巻)と呼び、
特に大きい20cm以上のものを大車(おおぐるま)と呼びます。
一般に寿司でも天ぷらでも、小型のサイマキやマキの方が身が柔らかくて味が濃く、美味しいと言われていますが、
実際にはどの大きさの物を最上と考えるかは寿司屋、天ぷら屋ごとに違い、バラバラです。 サイマキという言葉の由来ですが、昔、武士の腰刀の鞘(さや)に刻み目が付いていて、 車海老の縞模様がこれに似ていたので、車海老の略称を鞘巻き(さやまき)と言った。これがなまって、サエマキ、 サイマキとなり、これが小さな車海老の呼び方になった、という話です。 ただしこれらはもともと寿司屋系の呼び方で、天ぷら屋では「最も美味しいのは手一束(ていっそく)」 などと言っていました。これは海老を手で握った時に頭と尻尾がちょっと顔を出す大きさという意味で、 約12〜13cmのマキに相当します。 |
産地と旬 | 昔から関東では江戸前、つまり東京湾のものが最上とされました。
東京湾の汚れがひどかった時にはほとんど採れなくなりましたが、
最近はだいぶ浄化されて再び採れるようになっています。(ただし高価です。) その他、東北以南の各地で採れますが、水温が高いほうが成長が早いので、天然物、 養殖物とも九州各県の出荷が多くなっています。 天然物の旬は6月〜10月。4月に10cmのサイマキが10月頃には20cmの立派な車海老に育ちます。 冬には泥の中で冬眠してしまうので普通は採れませんが、最近は海底に電極を刺して通電し、 冬眠中の車海老を起こして採っているという話です。本当でしょうか? |
成分 | グリシン(甘味の強いアミノ酸)を特に多く含んでいます。(下記の表参照)。 脂分が少なくタンパク質の多い肉質で、加熱したものは保存がききます。 |
調理方法 | 活ものをオドリで食べるのもいいですが、加熱した方が甘味が引き立ちます。 ただし、ゆでるとその味がゆで汁に出てしまうので、 味を閉じ込められる天ぷらが一番美味しいという話がでてくるのです。 皮のついたまま鬼殻(おにがら)焼きにしても同じ理由で非常に美味しい。 背ワタはていねいに取りましょう。特に養殖物では背ワタに特有のにおいが残ってしまいます。 |
目利き | できれば活ものがいいのですが、そうでない場合には身に透明感があり、白くにごっていないものが新鮮です。 |
市場 | 2000年に日本で採れた天然の車海老は約1400トン。長期的に減少傾向です。養殖物は2,000トンです。 |
養殖ものについて | 海老の養殖は、車海老がたくさん採れる秋に生きた状態で買い付け、
それを2〜3ヶ月飼って値段の上がる年末年始に売るという畜養(ちくよう)から始まりました。
1900年頃にはすでに熊本で畜養が行われていたそうです。
その後、1933年〜64年までの長い年月をかけて藤永元作博士が産卵・孵化からの養殖技術を確立します。
「美味しい車海老を安く食卓に」という博士の情熱に感謝しましょう。 エビ類は養殖物でも天然物とあまり味が変わりません。 養殖物は成長を早めるために高カロリーのエサをふんだんに与え、かつ運動不足の状態になるので、 脂肪が付きやすく、大抵の魚類の場合にはその脂肪にエサのにおいが移ってしまいます。 しかしエビ類は脂肪が少ないので天然物との差が出にくいのです。 |
コメント | 最近の寿司屋は生もの全盛なので、車海老もオドリで出す事が多いようです。 ゆでたエビの寿司にはギアナ・ピンクや メキシコ・ブラウンなどの冷凍輸入物が使われる事が多いのですが、 オドリ用の車海老をゆでて握ってもらうと非常に美味しいので、ぜひ試してみてください。 (ただし、寿司屋からもったいないと言われる事もあります。) |
各種アミノ酸の含有量(単位:mg/可食部100gあたり)五訂食品成分表より
種類 | アルギニン | アラニン | アスパラギン酸 | グルタミン酸 | グリシン |
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車海老 | 1900 | 1100 | 1800 | 2900 | 2500 |
ズワイ蟹 | 1100 | 810 | 1200 | 1900 | 1100 |
ホタテ貝 | 930 | 630 | 1100 | 1700 | 1800 |
マダコ | 1100 | 740 | 1400 | 2100 | 930 |
真ダイ | 1100 | 1100 | 2000 | 2800 | 900 |
ヒラメ | 1200 | 1200 | 2100 | 3100 | 890 |